を出す博士であった。
「博士、だいぶんしみます。しかしわたしは、我慢していなければならないでしょう。そうでないと、いつまでも、もとの体になれませんからねえ」
 と、病気の火星人も、たいへん博士を信じて、たよっているらしいことが、その言葉つきからも、うかがわれた。
 そばでこの有様を見ていた新田先生は、全く不思議な気がした。
「博士、その薬は、よほどきく薬らしいですね。一体どういう病気にきく薬なのですか」
 と先生がたずねると、博士は、
「どういう病気といって、こういう病気にきくのだ。ほら、見ていたまえ。この通り火星人のくさりかかった体が、どんどんきれいに、なおっていく」
「なるほど、不思議ですなあ。そんなによくきく薬なら、わたしにも分けていただきたいですね。実は、わたしの……」
「だめだよ、新田君」
 と、博士が言った。
「この薬はね、君のような動物には、さっぱりきかないんだ」
「動物?」
 君のような動物と、博士に言われて、新田先生はむっとした。いくら弟子であると言っても、動物と呼ぶのはひどい。先生は、ここで蟻田博士の無礼をやっつけてやろうかとまで思いつめたが、しかし、今は重大な時で
前へ 次へ
全636ページ中374ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング