ある。ここで博士をおこらせてしまっては、人類のため大損である。先生は、一生けんめいにこらえたのだった。
 だが実は、博士は、悪気があって、先生を動物と呼んだのではなかったのだ。
 蟻田博士から、「動物」と呼ばれたことを、新田先生はいつまでも忘れることが出来なかった。が、それは博士から、「お前は動物だぞ!」と言われた時に腹が立ったという、それだけのことではなかった。それからずっと後になって、博士の言葉を、もう一度たいへんなおどろきと共に、思い出さなければならない大事件の日がやって来たからである。それはどんな大事件か、やがてわかる。
 博士は、病める火星人のために薬を塗終えた。
 火星人はたいへんに喜んだ。そうして全身をふるわせつつ、自分の体を博士の体にすりよせた。
「蟻田博士、ありがとう、ありがとう」
 よほど、うれしいらしい。
 博士は、にこにこ笑って、その病める火星人に、ゆっくり体を休ませるように言った。そうして、火星人が、そこに寝ると、その火星人の体の上に、きれをかけて暗くし、それから、どういうわけかその火星人の足を、水をいっぱい張った大きな洗面器のようなものの中に、つけさせたので
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