うしてここへ?」
「どうしてここへ? ふん、あたり前だ。ここは、わしの研究所なんだからな。他人のさしずを受けるものか」
 と、博士は相変らず、気みじかで、ずけずけした口をきく。
 その時、新田先生は、久方ぶりに見る博士の姿が、この前見た時とは違い、大へんやつれているのをいたましく思った。すなわち、腰はまがり、顔はさらにやせ、真白の頭髪はぼうぼうとのび、あのかっこうよくかりこんであったあごひげも、のびほうだいにのびて、すり切れた竹箒《たけぼうき》のようになっていた。
(どうしたのだろうか。博士のこのやつれようは?)
 博士は、鼻の頭にずり落ちそうになる眼鏡を押しあげながら、
「おい、新田。今、聞いておれば、お前はここにいるロロと、何か話をしていたじゃないか。お前はいつ、そのような勉強をしたのか、いやさ、どうして火星語を話せるようになったのか」
 博士は、不思議に思っているらしい。
 新田先生は、今はもう仕方がないと思い、変話機を出して、これまでのいきさつを、かいつまんで、博士に報告したのであった。
 博士はうなずきながら、おとなしく、先生の話を聞終った後、
「ふうん、お前にしては、お手柄
前へ 次へ
全636ページ中370ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング