も今はない。あの日の大地震で、すっかり崩れてしまったのである。先生が勉強していた本館も、今は地上に崩れてしまって、石塊の間からは、雑草が芽を出していた。雲間をもれて来たうす明かるい月光が、蟻田博士の研究所跡を照らし出して、見るからに、はだ寒い荒涼たる風景の中に、新田先生は気もぼんやりして、たたずんだのである。
「ああ、これでは博士を見つけることなんか、思いもよらない!」
 新田先生は、深いため息とともにつぶやいた。ひょっとしたら、研究所跡のどこかに、博士が小屋がけでもして、がんばっているのではないかと思ったが、見渡したところ崩れた跡はそのままであって、博士の住んでいる様子はどこにもなかったのである。
 蟻田博士の天文台の崩れたあとに、月光は、ぼんやりと光をなげている。まるで墓場のような風景である。ただ一人そこにたたずんでいる新田先生の心には、言いあらわせないほど、いろいろの思いが、わいて来た。
 博士は、どうしているのであろうか。
 そうして、博士は一体いい人なのか悪い人なのか。そうして、また大江山課長の言うように、ほんとうに火星のスパイをはたらいているのであろうか。
 博士の研究所は
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