らなかったのである。博士の日頃の行いは、あまりにとっぴである。人間ばなれがしている。博士から、教えを受けていた昔のことを思い出してみるのに、博士は、ただもう学問のことに、いつも夢中であって、学問のためなら、その外のどんなことでも、捨ててしまうというたちであった。だから、学問のためなら、大江山課長がうたがっているように、或は、火星のスパイとなって、地球人類を陥れるかも知れないと、そんな風に思われて来るのだった。
(もし、博士が、ほんとうに火星のスパイを働いているとすると、これは許しておけないことである。これはどうしても、博士を探し出し、ほんとうの気持をたしかめてみる必要がある。何しろ、火星の学問をおさめている学者として、博士以上のえらい人はいないのだから、ぜひとも、博士が火星の味方をしないように説きふせなければならない)
と、新田先生は、ついに、はっきり自分の覚悟をきめたのだった。
「大江山さん。私は、これから行って、博士を探して来ます」
「何、博士を探しに行くというのですか」
課長は、びっくりした。
「そうです。すぐ出かけます」
「それは、我々にとってもありがたいことだが、新田さん
前へ
次へ
全636ページ中352ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング