そこに待っていた。火星のボートは、今や地上を離れて、大空高く、ずんずん上昇して行くのだった。
 はるか下の方には、中空からのまぶしい光に照らし出されて、たくさんの火星のボートが、まるで太い棒を植えたように見える。
 その異様な中空からの光は、佐々の乗っている火星のボートから出ているのであった。これでみると、火星のボートは、エンジンをうんとかけると、ボート全体が、大変明かるく光るらしい。だから、これを遠くから見ると、火柱が天に向かって伸びて行くように見えるであろう。
「ほう、これはえらいことになったぞ。とうとうこのボートは、宇宙へ飛出したらしい」
 この時、佐々刑事の声は、もうあたりまえにもどっていた。別にうろたえている様子も、恐れおののいている様子も見えなかった。
「さあ、これは珍しい旅行をすることになったぞ。このボートは、どこまで行くつもりかしらないが、何しろ、火星のボートに乗って、宇宙旅行をしたのは、わしが始めてだろう。これでまた話の種がふえたぞ」
 と佐々刑事は、おもいの外、落着きはらっていた。
 火星のボートに、とりこになってしまったような佐々刑事であった。宇宙へ飛出したのはい
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