人の一人に、胸ぐらを取られて、びっくりした。
「こら、らんぼうし給うな」
 と、先生は彼の手を振りはらったが、彼はしっかと握って、放さなかった。その時、先生は火星人の手が、まるで鋼鉄の棒のように固くて、そうして冷たいのを知っておどろいた。
 そのらんぼうな火星人は、先生をなぐりつけるつもりか、一方の手を振上げた。その時、火星人の腕のつけねに妙な音がした。ぎりぎりぎりと、何か歯車で鎖を巻くような音だった。
「何をするっ」
 先生は、必死になってそれを防ぎながら、火星人の目を見た。
 火星人の目は、じっと遠いところを見つめているようであった。ガラス玉のような、うつろな動かない目であった。
 そのくせ、火星人の腕はのびて、先生の頭をめがけて、はげしくうちおろすのであった。
「あっ!」
 先生は、受損じて、頭が割れたかと思った。そうして、ふらふらと倒れそうになったので、先生は前後の考えもなく、火星人の胴中《どうなか》に抱きついた。
 すると、火星人はあわて出したようであった。そうして急に弱くなって、ごろんとその場に倒れた。
 新田先生は、火星人を下に押さえつけたまま、ふうふうと苦しい息をはいた
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