、様子をみてきてくれ」
「ははあ、いよいよまた始りますね」
「なにが、始るって」
「いや、変な人相手の、新こんにゃく問答が始るんでしょう。こんどは、こっちも負けずに、でたらめな文句を用意していって、変な博士をあべこべに、おどかしてやるかな。うわっはっはっ」
 佐々刑事は帽子をつかんで、課長の部屋をとびだした。が、しばらくすると、彼は顔色をかえて、戻ってきた。
「課長、いけませんや」
 顔色をかえて戻ってきた佐々刑事は、大江山課長の机のうえに、はいあがるような恰好をして、ものものしいこえを出した。
「どうしたのか、佐々」
 課長も、胸になにかしら、するどいものを突込まれたような感じがした。
「課長! 蟻田博士が、姿を消してしまったんです」
「姿を消した? すると家出したのか、それとも殺されたのか、どっちだ」
 大江山課長も、息をはずませて、問いかえした。
 全く、厄介《やっかい》なことになったものである。「火星兵団」をいいだした博士が、奇怪な謎をのこしたまま姿を消すなんて、めいわくな話である。
「わしの外《ほか》に、この謎をとく力をもった人間は、居ないであろう」
 などと、大きなことをい
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