考えた。しかしどうも、一向にとけなかった。
明くれば、その翌朝、課長は、警視庁へ出勤する道すがらも、バスの中で、いろいろ考えつづけたが、やはりとけなかった。
(近く地球のうえでは、暦がいらなくなる――とは、はてな)
出勤してみると、大江山課長は、或る別の事件で、急に目がまわるようないそがしさとなった。それがため、あれほど気になっていた老博士の謎だったが、いそがしさにまぎれて、忘れるともなく、忘れてしまった。
それは、一週間ほど、のちのことだった。
ふと、大江山課長は、蟻田博士がぶつけていったあの謎の言葉のことを、思いだした。
(はて、あれは、どこまで考えたのだったかなあ)
大江山課長は、それを思いだすのに、たいへん骨が折れた。それとともに、課長は、ふしぎな気持におそわれた。それは外でもない。あれほど、ぎゃんぎゃんやかましいことをいった蟻田博士が、その後うんともすんともいってこないことだった。
課長は、その日も時間がたつにしたがって、博士のことが気がかりになった。そこで彼は、部下の刑事をよびだした。
「おい、佐々《さっさ》。君、これからすぐ出かけて、蟻田博士がなにをしているか
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