びで、新田先生をいろいろともてなしたが、先生が長い間、病気に倒れていたと聞いて、たいへん驚いた。
「そうけえ、そうけえ。まあなおって、ようがした。体が元のようになるまで、ゆっくりうちの湯につかって行きなせえ」
老主人は、いつに変らぬ親切を、新田先生に向けたことであった。
その親切が、新田先生の心を、かえっていたませた。これがいつもであれば、すっかり腰を落着け、のうのうとした気分で、湯につかっておられるのであったが、今度はそうはいかない。モロー彗星は、あと一箇月で地球に衝突してしまうのだ。この掛矢旅館ののんびりした気分も、三方を高い山に囲まれたもの静かな風景も、あと僅かでおしまいになるのだ。そう思うと、先生の心はかえって、暗くなる。老主人弓形氏は、モロー彗星のことなど、まだ何も知らないようである。この大地がくずれて、天空にふきとんでしまう最後まで、この人のいい老主人は、何も知らないで人生を終えるのではないか。
(これは何とかしなければならぬ!)
新田先生の同胞への限りない愛の心が、先生の血を湧きたたせる。
春なおあさい掛矢温泉の岩にかこまれた浴槽の中に、新田先生は体をのびのびと伸
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