ばして、はや二、三日を送った。
 温泉のききめは早い。先生の体から、病後の疲れが見る見る去っていって、頬にもくれないの色がさして来た。
「ああ、ありがたいことだ」
 先生は浴槽から上って、手ぬぐいをぶらさげたまま、部屋に帰って来た。
 すると、その後からこの旅館の老主人弓形氏が、お茶とお菓子とを持ってはいって来た。
「温泉はいかがでございましたかな、新田先生」
「ああ、ありがとう。今日はまたかくべつないい入り心地でしたよ」
「それは、けっこうでした。まあお茶でも入れましょう」
 老主人は鉄びんの湯をきゅうすについで、手を膝においた。
「御主人に、この前からうかがおうと思っていたのですが……」
 と言いながら、新田先生は、ぬれ手ぬぐいを欄干にかけて、自分の席へ戻って来た。
「はあ、どのようなことで……」
「ゆうべも見えましたがね、温泉につかりながら、真暗な山を見上げていると、こっちの方向にある山の上の方に、ちろちろとうす赤い火が見えたり消えたりするんだが、あれは一体、何ですかね」
「はあ、あの火を、ごらんになったのかね」
 と弓形老人は、茶わんを盆の上において、新田先生の前に差出しながら
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