で来た!」と蟻田博士は言った。その言葉は、課長の耳に、たいへん無気味にひびいた。
「もし、蟻田博士、お待ちください。もう一つ重大なことと言うのは、一体何ですか」
 と、博士のうしろに、おいすがった。
 蟻田博士は、課長の手を払って、小ばかにしたような目で、じろりとふりかえったが、そのまま出ていく。
「博士、聞かせてください」
「ふん、聞きたいと言われるか。聞いても、やっぱり信じられまいと思うが――」
 と博士はあきらめ顔で、
「こういう謎がおわかりかな。近く地球の上では、『暦がいらなくなる日が来るであろう』どうじゃ、おわかりかな」
(近く地球の上では、暦がいらなくなる日が来るであろう)
 蟻田博士は、みずから、これが謎の言葉だと言って、大江山課長にぶっつけた。
 課長は、もちろん面くらった。
(ふむ、「近く地球の上では、暦がいらなくなる日が来るであろう」ううむ、はてな!)
 蟻田博士は、課長が困った顔をしているのを見ると、それ見たかと言わぬばかりに、にやりと笑って、部屋を出ていった。
 課長は、もうその後を追おうとはしなかった。
「はてな、どういう意味かしらん」
 課長は、ひとりごとを
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