いや、それどころではない。千二少年は今、丸木のために肩をつかまれて動けなくなっているのだ。
「こら、怪物。その少年をはなせ。何という、かわいそうなことをするのか」
 新田先生は、相手をどなりつけた。
 だが怪人丸木は、いっかなそれを聞こうとはしない。少年の肩をつかんで、ぐいぐいと手もとにひきつける。千二は顔を真赤にして丸木と争っているが、かよわい少年の力で、どうしてかなうものか。
 そうして、ついに千二少年は、丸木の長マントの中にかくされてしまった。怪人は、かちほこるように、気味の悪いうなりごえを上げる。
「け、けしからん。もう君をゆるしておけないぞ」
 新田先生は、相手が強敵であることは知っていたが、こうなってはもうやむを得ない。全身の力をこめて、怪人丸木の胸にぶつかった。
 丸木はよろよろと、二、三歩後に退いた。だが、彼はたおれはしなかった。
 やりそんじたかと、新田先生は、もう一度後に下った後、どうんと怪物の胸につきあたった。
 今度は、大分こたえたようであった。丸木はうなりながら、四歩五歩と、後によろめいて、ついに壁ぎわにどうんと背中をつけてしまった。
 それは相当ひどい
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