壜をうばってにげた。二度目には、警視庁から出て来た千二を、日比谷公園のそばに待受けていて、むりやりに自動車に乗せてしまった。そうして、交通掛の警官においかけられたが、ついに麻布の坂においつめられ、進退ここにきわまった。この時、「この先に崖がある。危険!」という注意の札が目に入ったが、もうどうすることも出来なくて、とうとう自動車を断崖へ走らせ、あの恐しい自動車事故をひき起したのであった。
その時、丸木は、不思議なことをやった。
それは一体どういうことであるかというと、千二の生命をすくったことである。――自動車が、断崖を通り過ぎるその直前、丸木は自動車の扉をひらいて、千二を外につき落したのであった。千二の体は、蟻田博士邸の生垣のしげみの中に、もんどりうってころげこみ、そうして一命は助ったのであった。そうして丸木は?
丸木は、そのまま自動車と共に崖下に落ちた。そうして不思議なことに、今もなおちゃんと生きているのだった。不思議だ。
26[#「26」は縦中横] 格闘《かくとう》
首のない丸木が、生きているのだ。今も新田先生と千二少年の前に、その丸木がうそぶいて立っているのだ
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