「やあ、大江山さん。わしはどうも貴官から言いつけられた命令を、はいはいと言って聞いておられないように思いますのじゃ」
 博士は、課長の顔を見ると、いきなり大きな声で、こう言った。
「困りますねえ、蟻田博士」
 と、大江山課長は、椅子からたちあがって、博士の肩をおさえ、
「私がお伝えした命令が聞かれないとあれば、やむを得ず、博士の自由をおしばりすることになるかもしれませんぞ」
「ははあ、わしを留置場へおしこめると言うのでしょう。うむ、やりたければ、どうぞおやりなさい。しかしそのために『火星兵団』を用心することが、おろそかになるわけじゃから、大損ですぞ。天下はひろいが、今『火星兵団』の秘密を解く力のあるものは、はばかりながら、わしの外には誰もないのじゃからのう」
 蟻田博士は、白髪頭をふりたてて、盛に言いまくるのだった。
「じゃ、博士は、火星が兵団をつくって、今夜にも我々の住む地球へ、攻めて来るとでも言われるのですか」
「今夜にも、火星の生物が地球へ攻めて来るかどうか、それはまだはっきり言えないが、『火星兵団』と言うからには、火星の生物は、どこかと戦いを交えるつもりにちがいない。すると、地
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