ない。
 怪人が、首をぽろりと落したこともほんとなら、また、首を拾い上げたことも、ほんとであった。
「そんなばかなことが!」
 と、叱られるかも知れない。だが叱られても仕方がないのである。あたりまえの考え方では、首がぽろりと落ちれば、その人間は死んでしまうのだから。死んでしまった体が、手をのばして自分の首を拾うなんてことが、出来ようはずがないのだ。普通に考えれば、そうであった。
 しかし、事実は、たしかに怪人の首がぽろりと下に落ち、そうして怪人が手をのばして、その首を拾い上げたのである。そのことは決して間違ではない。
 結局、そのように、普通では考えられないことが起ったについては、普通でないわけがあると思わなければならない。そのわけとは、どんなことであるか?
 そのわけの一つは、顎に白い繃帯をしていた警官が、ただ者ではなかったということだ。
 怪人! そうだ、たしかに怪人であった。しかも、この怪人こそは、外ならぬ丸木であったのである。
 丸木だろう――とは、気がついていた読者もおありであろう。しかし、丸木の首が落ちても、丸木は平気で生きていられるんだとは、まさか、だれも考え及ばなかった
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