ん。首のない人間と、たたかっているのだ!」
佐々は、こんな気持の悪い思いをしたことは、生まれてはじめてだった。てっきり自分はおかしくなったのだと思った。おかしくなったから、首のない人間が、生きているように見えるのだ。
「ぶうーん」
「あっ、いた――」
とつぜん、佐々の顎に、相手の鉄拳が、ごつんとはいった。彼は、顎が火のようにあつくなったまでしかおぼえていない。佐々は、はり板をたおすように、どすんと、うしろへたおれた。そうして気を失ってしまった。
首のない怪人は、ここで、にやりと笑いたいところであったろう。しかし首がないので、笑うわけにはいかない。
そこで彼は、ちょっとしゃがむと、両手をのばして、うしろに落ちていた首をひろい上げた。
怪人が、首をぽろりと落した。
佐々刑事も、そこまではちゃんと見ていたから、間違ない。
ところが、そのあとで、怪人は腕をのばして、自分の首をひょいと拾い上げたのだった。その時には佐々刑事は、怪人から一撃をくってひっくりかえっていたから、何も知らない。もしも、そこまで見ていたとしたら、恐らく、佐々刑事は自分の目をうたがって、発狂してしまったかも知れ
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