た。
「必ず、この附近に、何かの手懸《てがか》りが残っているはずだ。それを探しあてないうちは、われわれは、いつまでも、ここから引上げない決心だ。さあ、しっかり探してくれ」
課長は、聞くのもいたましい声で、そう叫んだのであった。
「よろしい、やりましょう」
部下は、そう答えて、課長の前を散った。篝火《かがりび》が点ぜられ、現場附近は、更に明かるくなった。捜査のため、右往左往する人々の顔が、その篝火をうけて、鬼のように、赤く見えた。
このとき佐々《さっさ》刑事は、懐中電灯を照らして、自動車の落ちた崖のすぐ下のところを、しきりに探していた。
「この辺に、足跡がついていなければならぬはずだが……」
と、彼は、ていねいに、崖下を、しらべて歩いた。
「こうあたまを使うのだったら、ライスカレーを、うんとたべてくるんだったのに……」
あたまのよくなるライスカレーのことを、佐々刑事は、思い出して、うらめしくなった。
そのとき、佐々刑事の進んでいく方角から、反対にこっちへ歩いて来る一人の警官があった。彼は夢中になって、崖下を照らしている佐々刑事の姿を、様子ありげに、じろじろと見ていたが、やがて
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