千二少年は、まだ外に出ていないではないか」
 正にその通りである。
 その時刻なら千二少年は、まだ警視庁の留置場にいた。
「なるほど。これは私としたことが、ぼんやりしていました」
 と、佐々は頭をかきながら、また帳面をめくった。
「はい、ありました。これは午後一時です。十四歳になる竜田《たつた》良一と名乗る少年が、リヤカーに乗ったまま、昭和通で自動車に衝突、直ちに病院にはいりましたが、この原因は、信号を無視したためです。直ちに、主人に知らせたので、主人は、店員と共に駈けつけ、目下、看病中――というのがあります」
「それもいけないね」
「はあ、名前がちがっていますが、もう一度しらべ直してみませんと……」
「主人や店員が来て、落ちついて看病しているのなら、ほんとうの店員竜田良一で、千二少年が偽名しているわけではない」
「なるほど。これもだめですなあ。では、こういうのがあります。あ、これだ」
 と、佐々刑事が、大きな声を出した。
「うむ、早く読め!」
 大江山課長は、思わず体を前に乗出した。
「午後九時四十分のことです。千葉県から出て来た十三歳になる少年が、大川端から投身自殺《とうしんじさつ
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