あるが、佐々としては、ここで大いに笑って、課長を元気づけたい一心だった。
 だが、課長は、佐々の笑いにつられて、笑い出しはしなかった。
「そうじゃないか。なぜと言えば、もし千二が朝のうちにこの留置場から出ていったものとすれば、お昼すぎには千葉の家へかえりついているはずだ。そうだろう」
「まあ、そうですね」
「かえりつけば、千葉警察の者が、こっちへすぐ報告して来るはずだ。なぜと言えば、千二の家は、ちゃんと警官が張番をしているんだからな」
「なるほど」
「ところが、今はもう夜じゃないか。しかるに、千葉からは、何の報告も来ていない。すると、千二は、まだ自宅へかえりついていないことが、よくわかるじゃないか」
「な、なるほど」
 佐々は、なるほどの連発だ。
「そこだ、私のたいへん心配しているところは」
 と、課長は、語気を強めて言って、
「だからこれは、ひょっとすると、千二が途中で例の怪人丸木にさらわれてしまったのではあるまいか。そういう疑いが起るではないか」
 課長だけあって、考えがかなり深かった。ほんとうに課長の言うことは、中《あた》っていたのである。怪人丸木は、たしかに千二を途中でさらって
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