もとのようにすうっと晴れやかになった。
「どうも、へんだ。鉄管から頭を出すと、気分が悪くなる。これは一体どういうわけだろう」
 でも、千二は、そのまま鉄管の中にひっこんではおられなかった。どうしても、あの怪しい物の正体を見とどけるのだ。
 千二は、鉄管のかげにいると、気分が一向悪くならないのに気がついたので、こんどは用心して、鉄管の隙間から、目だけ出したが、果して思った通り、気分の方は大丈夫であった。
「うむ、あの怪物体から、何か気分を悪くするような毒気を出しているのにちがいない」
 千二は大きくうなずいたが、そのとき、また意外な光景にぶつかった。
 もう千二は、一生けんめいである。鉄管と鉄管との、わずかの隙に目をあてて、天狗岩の怪物体をにらみつけている。
 その時、かの爆弾のような形の、大きな怪物体が、突然すうっと動き出した。いや、動くというよりも、横に倒れ出したのである。
「あっ、あぶない」
 と、千二が叫んだ時には、もうかの怪物体は、天狗岩の上に横倒しとなって、ごうんとぶつかった。そうして、ぶつかった勢いで、こんどは、ぽうんと天狗岩からはねあがった。
「あっ、おっこちる」
 千二
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