刺さっているのだった。その爆弾|様《よう》のものは、表面からネオン灯のようなうす桃色の光を放っていたので、その輪郭は、はっきり見えた。
 それは一体何ものであろうか。


   2 漂《ただよ》う毒気《どっき》


 天狗岩《てんぐいわ》に、斜に刺さっている爆弾のような怪しい物!
「あっ、あれは、なんだろう!」
 と言ったきり、千二は、まるで石の人形のように、からだが、うごかなくなった。それはあまりに驚きがひどかったからだ。
 でも、こわい物を見たいのが人情であった。千二は、ぶるぶるとふるえながらも、目を皿のように大きくして、そのうす桃色に光る爆弾様の巨体をじっと見つめていた。
 すると、いた、いた。
 その爆弾様のものの上に、なにかしきりに動いているものがあった。それは、俵のような形をしていた。うす桃色の光が、そこのところだけ影になる。つまり俵の影絵を見ているような工合だった。
「な、なんだろう、あれは……」
 千二は、鉄管からはい出した。とたんに、なにかの毒気にあたったかのように、胸がむかむかして来た。
「あっ、苦しい」
 彼は、また鉄管の中に、はいこんだ。すると、とたんに、気分は
前へ 次へ
全636ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング