なって、正面をにらんでいた。車は、町の信号も何もおかまいなく、怒れるけだもののように走っていく。
その時千二は、運転手の横顔を見て、心臓がとまるほど驚いた。
「あっ、丸木さんだっ!」
丸木だ! 怪人丸木だ! 運転台でハンドルを握っているのは、この前千二がひどい目にあわされた怪人丸木であったのだ。
「静かにしろ、お前が、そばからうるさいことを言うと、この自動車のハンドルが、うまくとれやしない。もし衝突でもしたら、大変じゃないか」
丸木も、かなり、あわてていることが、彼の言葉によって、よくわかった。
「でも、丸木さん。おまわりさんにつかまると、大変なことになるから、早く自動車をおとめよ」
「いや、とめない。もしとめると、わしは、また人間を殺すだろう。なるべく、手荒いことはしたくないからなあ」
そう言って丸木は、スピードをさらにあげて、芝公園の森の中に自動車を乗入れた。
芝公園の森の中にとびこんだ自動車は、小石をとばし、木の枝をへし折って、森かげをかけぬける。
公園の出口が見えた。
非常召集の命令が出たとみえ、森の出口のところには、棒をもった警官隊がずらりと人垣をつくって通せん
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