坊をしているのが見えた。
「あっ、あぶない!」
「なに、かまうものか。向こうの方で、この車に轢かれたがっているのだから」
怪人丸木は怒ったような口調で、このような言葉を吐くと、あっという間に自動車を、その人垣の中におどりこませた。
「ああっ!」
千二は、もう目をあけていられなくなった。彼は、両手で自分の目をふさいだ。
自動車の前のところへ、何かぶつかったような音を聞いた。車体はぎしぎしとこわれそうな音を立てた。
だが、千二が、ふたたび目をあけてみると、自動車は、相かわらず、すごいスピードで町を走っていた。
「どうしたの、丸木さん」
と千二は、とてもしんぱいになって、丸木にたずねた。
「こら、だまっていろというのに。――もうすこしだ。下りるかも知れないから、もっとわしのそばへよって来い」
「えっ」
「はやく言いつけたとおりにしろ。さもなければ、お前の命がなくなっても、わしは知らないぞ」
「いやです。ま、待って下さい」
自動車は、その時さびしい坂道をかけあがっていた。人通はない。
その時、自動車は、くるっと左へまがって、きり立ったような坂をのぼり始めた。その時千二は、その坂道
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