た。オートバイの上には、風よけ眼鏡をつけた逞しい警官が乗っていたが、手をあげて、こっちの自動車に「とまれ!」の合図をした。
(ははあ、この運転手さんがスピードを出し過ぎたから、それで、おまわりさんに、ストップの号令をかけられたんだな。かわいそうに、この運転手さんは、おまわりさんに叱られた上、罰金をとられるだろう)
 と、千二は気の毒になって、運転手の方をふり返った。
 すると、運転手は車をとめるかと思いの外、車外の警官をじっと睨《にら》みつけると、かえってスピードをあげて、たちまちオートバイを追越した。
 千二は驚いた。
 白いオートバイの警官からストップを命令されたのにもかかわらず、自動車は彼を乗せたまま、ぐんぐんスピードをあげて逃出したからだ。
「ねえ、運転手さん。おまわりさんが、ストップしろと命令しましたよ。早くとめないと、大変ですよ」
「おだまり、千二!」
「えっ!」
 千二は、また驚いた。
 運転手から、彼の名を呼ばれて、二度びっくりであった。
「運転手さんは、どうして僕の名を知っているんですか」
 と千二は、となりに並んで腰をかけている運転手の顔を見た。
 運転手は、中腰に
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