ろである。へんなことをして、また間違いをしてはならないと、乗りたい心をおさえたのであった。
「いいから、お乗りなさい。さあ、早く、早く」
千二は、運転手に腕をつかまれたまま、車内の人となった。
はじめから、このりっぱな自動車に乗りたい心であったが、これでは、何だかこの運転手のため、無理やりに、運転台へ乗せられてしまったようなものである。
千二は、何だかちょっと不安な気もちになった。そういえば千二の腕をつかんだ運転手の力は、あんまり力がはいり過ぎて、こっちの腕が折れそうであった。
「動くよ」
運転手は、しわがれた声で言った。
すると自動車は、たちまち勢いよく公園のそばを離れた。そうして日比谷公園の角を右へ折れると、芝の方へ向かってスピードをあげた。
「すごいスピードだなあ」
千二は、感心して、運転台のガラスから、商店や街路樹や通行人がどんどん後へ飛んでいくのを、おもしろく見まもった。
だが、しばらくいくと、変なことが起った。
それは、白いオートバイが、後から追いかけて来たことである。そうして、千二の乗っている自動車の前を通り過ぎると、うううっと、すごい音のサイレンを鳴らし
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