のではないかと思ったほどである。
 しかし、これは決して食あたりのせいではなかった。いずれ後になってはっきりわかるが、千二が胸が悪くなったのも、もっともであり、そうしてそれは食あたりではなく、原因は外にあったのである。
 千二は、ついにたまらなくなって、道のうえに膝をついた。
 とたん、さあっと音がして、雨が降出した。この時冷たい雨が千二の頬にかからなければ、彼はその場に長くなって、倒れてしまったかも知れない。だが、幸運にも、この冷たい雨が、千二をはっと我にかえらせた。
「うん、これはしっかりしなければだめだ」
 雨のおかげで地面が白く見え、彼のすぐ近くに、大きな鉄管《てっかん》が転がっているのが眼についた。彼は雨にぬれないようにと思って、元気を出してその中へはいこんだ。
 その時であった。ずしんと、はげしい地響《じひび》きがしたのは!
 ずしん!
 たいへんな地響きだった。
 千二のはいこんでいた大きな鉄管が、まるでゴム毬《まり》のように飛びあがったような気がしたくらいの、はげしい地響きだった。
 はじめは、地震だとばかり思っていた。
 が、つづいて何度もずしんずしんと地響きがつづく
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