のではないかと思ったほどである。
しかし、これは決して食あたりのせいではなかった。いずれ後になってはっきりわかるが、千二が胸が悪くなったのも、もっともであり、そうしてそれは食あたりではなく、原因は外にあったのである。
千二は、ついにたまらなくなって、道のうえに膝をついた。
とたん、さあっと音がして、雨が降出した。この時冷たい雨が千二の頬にかからなければ、彼はその場に長くなって、倒れてしまったかも知れない。だが、幸運にも、この冷たい雨が、千二をはっと我にかえらせた。
「うん、これはしっかりしなければだめだ」
雨のおかげで地面が白く見え、彼のすぐ近くに、大きな鉄管《てっかん》が転がっているのが眼についた。彼は雨にぬれないようにと思って、元気を出してその中へはいこんだ。
その時であった。ずしんと、はげしい地響《じひび》きがしたのは!
ずしん!
たいへんな地響きだった。
千二のはいこんでいた大きな鉄管が、まるでゴム毬《まり》のように飛びあがったような気がしたくらいの、はげしい地響きだった。
はじめは、地震だとばかり思っていた。
が、つづいて何度もずしんずしんと地響きがつづく
前へ
次へ
全636ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング