らないか」
「ああ、博士、いました!」
「え、いたか。どこに」
「先頭から三番目の宇宙艇です。左からかぞえて、三番目になります」
「うむ、あれか。なるほど、赤い三角旗のようなものが見える。――おい、新田、ガス砲の用意を! こんどは、なかなか骨が折れるから、そのつもりで……」
「はい、しっかりやります」
「千二も、しっかり見張をしているんじゃぞ」
「博士、ぼくのことなら、心配いりませんよ」
「よろしい。みんな、それでよろしい。今ここで、火星兵団を叩きつぶさないと、地球人類は、かれらの奴隷とならなければならんのじゃ。しっかりいこう」
 ふしぎなのは、蟻田博士という人であった。おかしな学者といわれた人物でありながら、こうして、火星兵団とたたかっているところをみると、どうみても、千軍万馬をひきいる無敵の老将軍のおもかげがある。たのもしいかぎりである。
 かんがえてみるのに、蟻田博士は、たいへん、かわった学者であった。博士は、あたりまえの学者とは、全くちがう道をとおってきた大学者であった。
 博士は、ずいぶん前から、地球人類が、地球外の生物から、このように、はげしい攻撃をうけることをしっていたのである。そうして博士は、そのことを、世の人々に、それとなく注意したのであるが、だれもそれに耳をかす者がいなかった。やむなく博士は、他人をたのみにせず、自分ひとりで外敵にあたろうと、決心したのであった。
 博士のながいあいだの苦労が、今ここに実をむすんで、うまく外敵をけちらすか、それとも、外敵のため、博士も、他の人間とおなじように、こっぴどくやっつけられるか、二つのうちの一つが、今きまるところなのだ。
 たまたま、新田先生と千二少年とは、はからずも、博士をたすけることになった。それは、そのようになったともおもわれるが、しかし、よくかんがえてみると、それは、おもいがけない出来ごとではなかった。
 なぜならば、新田先生は蟻田博士の門下であり、千二少年は、新田先生の生徒であった。博士からいうと、新田先生は、弟子であり、千二は孫弟子にあたるわけだ。師弟のえんは、このように、ふかいのであった。
 なんとかして、蟻田博士隊に、凱歌《がいか》をあげさせたいが、はたして、うまくいくか、どうか。火星兵団長丸木は、今や、かんかんにおこって、全宇宙艇をひっさげ、ただ一台の大空艇めがけて、おそいかかったのである。
 火星人対最後の人間の空中死闘だ!
 火星人が勝つか、地球人類が勝つか。
 空中において、いよいよ最後の運命をかけた一大決戦の火ぶたは切られたのである。
 ああしかし、こっちは蟻田艇ただ一台、それにたいし敵の宇宙艇は、かぞえられないほど、どっと蟻田艇めがけて攻めてきた。
「博士、大丈夫ですか」
 と、新田先生の顔色もかわった。
「博士、勝ってくださあい」
 と、千二も一生けんめいなこえで、博士をはげました。
「勝ち負けはわからん。ただ、各員大いにふんとうするだけだ。――そら来たぞ! 新田、撃て!」
 蟻田艇めがけて、火星の宇宙艇は、束になってやってきた。いつのまにか、丸木ののった司令艇は、うしろにかくれてしまった。ずるいやりかただ。
 新田先生は、このところ射撃手である。先生は、なかなか責任がおもい。
「撃ちます」
 引金をひいた。ごんごんごんと音がして、ガス弾は白いあとをひいて、砲門をはなれていく。
 みるみるうちに、先頭の敵艇は、ま正面をひきさかれて、火をふきながら下におちていった。なにかもえやすいものが、正面のところにあったらしい。
「やった!」
 先生は、さけんだ。だが、おちていく敵艇の最後を、たしかめているひまはなかった。また次なる敵艇が、もうすぐまぢかにせまっていたのである。
「きさまも、煙になれ!」
 先生は、ねらいをさだめて撃つ。
 見事に命中だ!
 それからは、先生は、もう無我夢中で、引金をひきつづけた。今は全く火星の宇宙艇群の中にとびこんでしまったのだから。
 千二は、おどろいた。蟻田艇から、どっちを見ても敵艇ばかりである。すっかり敵艇にとりかこまれてしまったのである。
「これで、よくまあ空中衝突をしないものだなあ」
 千二は、蟻田博士の操縦のうまいのにおどろいた。
 しかし、これは博士の操縦のうまいだけではなく、大空艇には、引力を利用した衝突をさける装置がつけてあったのだ。
 これはつまり、自分のそばへ他のものが近づいて来ると、ごくわずかであるが、二つのものの間に引力がはたらいて来る、すると、装置はその引力の方向を感じ、自動的に舵を安全な方角に向けなおすのであった。
 この衝突自動防止装置のおかげで、大空艇が、どんなに相手に近づいても、けっして、衝突はおこらない仕掛になっていた。だから、この装置のおかげで、大空艇は、どんなことがあっても、衝
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