射撃する作戦は、蟻田博士が考えついたものであったが、そこまでは大成功だった。
 空中に飛上った火星の宇宙艇は、その数三、四十隻であった。
 高い山々にせばめられたせまい空を、この宇宙艇は、怪音を立てて飛びかうのであった。
 その中の二隻は、火星兵団長の丸木から、偵察を命ぜられた宇宙艇だった。
「どこにいる? 人間隊は? そうしてガス砲隊は?」
 偵察の艇は、山を一つ飛越えて、しきりにその向こうを探しまわっていた。
 ところが、空中に舞上ったほかの宇宙艇は、ごうん、ごうんと、ものすごいひびきを立てて、どんどん高空へ上っていった。
 これを見て、突撃隊は、さっと喜びの声をあげた。
「ああ、宇宙艇の一部が、逃出したのじゃないかな」
「おお、逃げていく。鬼のような火星兵団が、そろそろおじけづいたぞ」
 ところが、偵察任務にある二隻の宇宙艇は、勇敢にもだんだん低空に舞下りて来て、どこまでも人間隊のガス砲陣地を、さぐろうという様子が見えた。
「どうしたのだろうか。人間隊は、どこにも見えないようだが……」
 偵察艇の火星兵には、人間隊が見えなかった。見渡すと山には木がしげり、白い道がくねくねまわっているのと、それから、はるかに下の方に、畠が見えるばかりであった。
「おかしい。どうもわからぬ。もっと下って見よう」
 ちょうど山のふもとに、こんもりした森があった。宇宙艇はだんだん舞下り、千メートルぐらいの高度をとってこの森の上まで来た時、にわかに森の中から、まぶしい火光がつづけざまに走ったと思ったら、どどどどん、どどどんと大きな音を立てて、高射砲弾が宇宙艇のまわりに炸裂した。
「あっ、しまった!」
 と、火星兵たちはびっくり!
「ああ、しまった!」
 と言ったのは、偵察艇に乗っていた、火星兵であった。
 ちょうど森の真上まで来た時、下から不意打に、もうれつなガス弾の砲撃を受けたのであった。
 蟻田博士の作戦にもとづき、突撃隊はこの森に放列をしき、ここから砲撃していたのであった。そこへ偵察艇が飛んで来たものであるから、しばらく鳴りをしずめていたのである。しかもこの時偵察艇はたいへん高く飛んでいて、とても森からガス弾を飛ばしても、とどかないことがわかっていた。だから今も言ったように、鳴りをしずめていた方がよかったのだ。
 そのうちに何も知らない火星の偵察艇は、大砲のありかを探すため、だんだん下へ舞下りて来た。これはちょうど、おあつらえむきだと思っているうちに、偵察艇はどんどん高度を下げ、ついにガス砲の射程内にはいったのである。
(そら、しめた! 今だ、撃て、撃て!)
 というわけで、森の中から、はげしい砲撃が、火星の偵察艇に向けて始ったのであった。
 大江山突撃隊は、おどり上って喜んだ。
 森の上へ舞下りて来た二隻の偵察艇は、いずれもこっちが放ったガス弾が命中して、あのかたい外壁が、黄色い煙を上げてとけ出した様子である。
「そら、もっと撃て!」
 突撃隊は元気づいて、さらに巨弾の雨を二隻の偵察艇に集めた。
「もういけない。非常信号を丸木兵団長に!」
 消えゆく偵察艇から無電が放たれた。それは丸木兵団長のところへ、もちろん聞えた。兵団長はそれを聞くと、たいへんおこり出した。
「よし、今度は、おれが出かけるぞ」
 丸木は、司令艇の中で、はげしくおこっている。
「兵団長、お待ち下さい。人間隊のガス弾は、なかなかつよいききめをもっていますから、おいでにならぬ方が……」
 と、幕僚が言えば、丸木は、またもやおこり出して、
「だまれ。こっちの偵察艇はゆだんをして低空におりたから、ガス弾のために、あんなむざんな最期をとげたのだ。うんと高空から、怪力線をおとせばいいのだ」
「しかし、万一のことがありましては、火星へもどりました時に、われわれは……」
「われわれはおもく罰せられると言うのだろう。いや、とめるな。ここで、わが火星兵団が人間隊に負けたとあっては、火星軍の恥である。どうせ地球人はもう永いことはないのだから、きっと、こっちが勝つにちがいない。全艇に出動命令を出せ」
 丸木は、なんと言っても聞かない。
「それに、困ったことが起ると思います」
「困ったこととは……」
「宇宙艇がとびあがると、中にはたたかうどころか、さっさと、また火星へにげてかえる艇が出るにちがいありません」
「そういう艇兵は、あとできびしく罰するから、ほうっておけ。とにかく高空へのぼり、全艇同時に敵の砲兵陣地へ向けて、怪力線を出せば、きっとこっちの勝だ。おい、早く命令しないか」
「はい」
 丸木の決心はかたかった。
 そこで仕方なく、幕僚は全艇出動の号令をつたえた。全艇出動と言っても、捕虜の番をするため、十名ばかりの火星兵が、あとにのこることとなった。
 こうして、ついに火星兵団の全艇は、ものす
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