出動して、火星人と見たら、今一同の手に渡したガス弾でやっつけてしまうのだ。火星人を見つけたら、決して見逃さないようにすること。ここで一人の火星人を逃せば、十人、二十人の尊い日本人の生命を犠牲にする上、もしも火星にまで逃帰られたら、それこそどんな新兵器を持った新手の火星兵団が、この地球へ攻寄せて来るかわからないのである。だからわが突撃隊員は、火星人を見たら仕損じなく、そうしてすばしこく火星人を倒すよう心がけることだ。わかったか、わかったろうな」
「はい、わかりました」
「よろしい、各隊、出発!」
突撃隊長大江山課長は、ついに前進の号令を発した。
55[#「55」は縦中横] 突撃隊《とつげきたい》
突撃隊の出発だ。
めあては、まず甲州の山奥にかまえている、火星兵団だ。
そこには怪人丸木が隊長として、幾十幾百とも知れぬ火星の宇宙艇を、さしずしているのである。
地球がモロー彗星にこわされる前に、この宇宙艇の中につみこんで火星へさらっていこうというあわれな捕虜たちが、附近の穴の中にたくさん押しこめられていた。人間もおれば、馬や牛や豚や猫や犬もいる。すべて火星では見られない、まことに不思議な生物なのである。
火星人は、人間や馬や牛を火星へ連れていって、家畜とするつもりである。馬や牛が家畜とされるのはまだいいとして、人間たちが、火星人のため家畜とされて、たまるものではない。
大江山捜査課長を隊長とする突撃隊は、火星兵団の手から、捕虜になっている人間をとりかえそうと、甲州の山奥をさして押しかけたのであった。
「ははあ、また麓の方から人間隊がやって来たぞ」
「おお、また来たか。人間というやつは、なかなかしぶといやつだな」
火星人が二人、山のいただきに監視兵として立っていたが、突撃隊が下からのぼって来るのを見て、ばかにした。
そうでもあろう。これまでにこの山をめざして攻めのぼって来た警官隊や青年団などの数は、じつにおびただしい。しかし、彼らはいつも火星人の敵ではなかった。いつも、こっぴどく火星人のために撃退されてしまったのである。今度も、きっと人間隊は、山の斜面をころがって、逃出すであろうと、火星人は、ばかにしきっていた。
火星人は、おいおいと山のいただきに、すがたを見せはじめた。突撃隊は静かにのぼって来る。さて、どんな戦いがはじまるのであろうか。
静かに、だまりこくって、じりじりと山道をのぼって来る大江山突撃隊であった。
これを上から見ている火星兵たちは、がやがやさわぎたてている。
「また性こりもなく、人間どもが攻めて来やがった。見ろ、たたかわない前から元気がないや」
「そのようだな。負けるとわかっておれば、攻めて来なければいいのに、人間は、頭がわるいね」
「みな殺しにされるまで、ああやって攻めて来るつもりなんだろう。さあ、今日は人間を何人やっつけてやるかなあ。十四、五人を手だまにとって、谷底へ投げこんでやるかな」
「おれは、火星へみやげに連れて帰るのだから、よく働きそうな奴をよって捕えるつもりだ。そして奴らの体に、おれの名前を焼きつけておこうと思う」
などと、火星兵は、ずいぶん勝手なことを言合っていた。
実のところ、このごろ火星兵たちは、人間があまり弱いので、本気になってたたかう気がしなくなった。
宇宙の中で、火星人が一番えらいのだという考えが、一そう彼らの心をおごらせ、そうして、ゆだんをさせた。
だから、山のいただき附近には、まるで蟻のけんかでも見るような気で、たくさんの火星兵が集って来た。彼らはいずれも、かっこうのわるい、あの太い胴をゆすぶり、そうして針金のように細い手足を振りまわして大きな頭をぐらぐらさせながら、楽しそうに下をのぞいている。――まことに失敬きわまる火星兵どもであった。
ちょうどその時、彼らのそばへ、黒い帽子に黒マントの火星人が二人、近寄って来た。黒い帽子に黒マントのすがたをしているのは、火星人の中でも、幹部級の者とか、とくべつ任務の者であった。だから、火星兵たちは、この二人を見ると、手をあげて敬礼をするのであった。
「あいつ、いやな奴だなあ。敬礼をしてやっても礼を返さないよ」
「ふん、きっと地球の空気を吸いすぎて、おかしくなっているのじゃないか」
火星兵たちが、こんなうわさをして、黒い帽子に黒いマントの二人づれのあとを見送っている。
このいやな奴と言われた二人こそ、じつは蟻田博士と新田先生とであったのだ。二人は、突撃隊よりも一足先にこの山中にまぎれこみ、大胆にも、今こうして火星兵のいるまん中を、のっしのっしと歩いているのだった。もちろん二人ともだまって歩いている。黒い目がねの下から、二人の目があやしくぎらぎらと光っている。二人は何をしようというのであろう。
(もう、この
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