心配だから、誰か腕利《うできき》の警官をつけて上げましょう。体がよくなったら、先生、あなたも、ぜひわれわれに力を貸して下さい」
「はい、わかりました。私は、すこし寝たいと思います。その上で、火星人と大いに戦いますよ」
そこで、先生は電話を切った。
警視庁では、先生のこの報告には、おどろきもしたがまた喜びもした。
早速全国に手配をして、火星人に備えることとした。
さて火星人は、どんな手を使って、人間狩をするであろうか。
37[#「37」は縦中横] 石けりの子供
火星兵が、人間狩をはじめる。
何と、世の中は変ったことであろうか。その昔、地球人類は、火星へ攻めていこうなどと言うことを考えた時代もあったが、今はあべこべに、いつの間にやら、火星兵におびやかされる世とはなったのである。
地球がモロー彗星《すいせい》と衝突して、こなごなにこわれる日は近づいたし、その上に、この火星兵の人間狩の恐怖までが加わって、地球に住む人間たちは、二重の大難にぶつかったわけである。
その火星人と言うのが、どうもいろいろのことから考えて、地球の人間よりも、ずっと賢い生物らしいのは、困ったことであった。
人間と人間、国と国との戦争においては、いくら相手が強くても、強さが知れている。いくら相手に秘密の新兵器があると言っても、こっちはスパイを使って、ある程度まで、その新兵器がどんなものであるかを、あらかじめ知ることが出来る。
しかし、火星兵のとつぜんの襲撃には、全く困ってしまった。地球の人間は、今までに、火星兵のことなどを、ほとんど、しらべていなかったのである。火星人のすがたを見たのも、今がはじめてである。
ところが、火星人の方では、前から、よほど念入に、地球のことをしらべ、地球に住んでいる人間のことまでしらべていたものらしい。ことに、地球の上で世界戦争がおこり、人間同志攻めあい殺しあいしているのを、火星人は、よく知っていたようである。彼ら火星人は、人間たちが人間たち同志の戦争で、ちょうどつかれはてていることを知って、地球攻略の心を起したようにも考えられるのである。
誰か、火星人のことをよく知っている者はいないか。そうして火星人の弱点をついて、あべこべに、彼らをやっつける者はいないか。こういう時に思い出されるのは、あの火星の研究家蟻田博士のことだ!
火星人の帝都侵入!
それは、だまって許しておかれないことであった。およそ、地球の人間をばかにしたやり方であった。口では人間を助けてやるのだと言っているが、その実、このまま人間をほうっておけば、地球がモロー彗星と衝突の日に人間は皆死んでしまうであろうから、人間の死なない前に、その全部を火星へつれて帰り、これを火星の上で飼おうというのが、火星人の腹の中にあるほんとうの考えらしい。
思っただけでも腹の立つことである。人間ともあろうものが、家畜と同じように飼われたりしてたまるものか。火星の上で、人間が柵《さく》の中につながれたり、首に鎖をつけて火星人に引張って歩かれたり、そんな目にあって平気でいられるであろうか。火星人は、地球の人間の弱みにつけこんでいるのだ。人道から見て、許しがたいことである。
ある人々は、この際だから、火星人に助けを求めるより外なかろうと、弱音をはいていた。火星の外に、人間に近い生物のいる星はないのであるから……。
だが、そう言う人々は、だんだん火星人の腹黒さがわかって来るとともに、口をつぐんでしまった。彼らもやはり火星人のため、人間が奴隷のように使われることが、いやだったのであろう。
この、まことによくない火星人の心掛は、どうして起ったのであろうか。火星人は、みな悪者の生まれかわりであろうか。これから後、だんだんと、火星人の残忍な行いが、読者諸君の前にあらわれて来るであろうが、火星人こそ、人間の考えではとてもわかりっこないほどの奇怪な生物であったのだ。火星人が、なぜそれほど平気でむごたらしいことをやるか、その謎は、やがてはっきりするであろう。恐しい強盗殺人犯どころか、鬼畜にもまして、火星人は冷たい心の持主なのだ!
下町の、とある横町の道ばたで、女の子が五、六人、チョークで白い輪をかいて、楽しそうに石けりをしていた。
その時、向こうの辻に、黒い帽子に、黒い長マントを着、黒い眼鏡をかけた同じような姿の人が、五、六人あらわれた。
長マントの連中は、辻のところで、こっちの方を見た。女の子たちが、楽しげに遊んでいるのを見ると、彼らは、何事か話し合っていたが、そのうち、あまり広くもない横町を、一列になって進んで来た。
あいにく、ちょうどその時、この横町は、子供の外にだれも外に出ている者もなく、また通行人もなかった。だから、長マントの連中は、そのままずんずん歩い
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