なり軍隊なりに知らせなければならないと思った。
新田先生は、そろそろと、もの陰から這出した。今のうちに火星人の目をのがれて、山を下ろうと考えたのであった。
先生は手さぐりで雑草の間をくぐって、山を下り出した。
すると下の方から、また例の、ひゅうひゅうぷくぷくと火星人の声がして、こっちへ近づいて来る様子なので、びっくりしてまたもとへ引返した。
先生は、もとのもの陰に戻ったつもりであった。
ところが、しばらくすると、先生はそれが間違で、また別の場所へ来ていることに気がついた。
そこも、一つの洞穴《ほらあな》であったが、火星人が十四、五人ごろごろと転がっていた。
(これは大変!)
と、先生がそこを飛出そうとすると、前方から怪人丸木がはいって来た。
丸木は、洞穴にはいると、大きな声でどなった。それは、先生には何を言っているのか、よくわからない火星人の言葉であった。
すると、転がっていた一同は、がばとはね起きて丸木の前に並んだ。
先生はびっくりした。ここで見つかっては大変である。どこかに体をかくすところはないかと、前後左右を見廻すと、ちょうど幸いにも、あまり大きくない機械を、山のように積上げてあるところがあったので、先生は急いでその後に体をかくした。
丸木は、先生のいることには、どうやら気がつかないらしく、しきりに火星人を前に、声高に話をしている。一体何の話をしているのか、先生はこれを知りたかったが、火星人の言葉を知らないので、どうにもならない。
ところがその時、先生は、どこかで人間の小さい話声を耳にした。
怪人丸木が洞穴の一室で、隊員たちを前に、何かわけのわからない火星人の言葉で、しきりにしゃべっている。その同じ室の隅では、新田先生が、つみ上げられた機械の後に、じっと小さくなってかくれている。すると、その時先生はとつぜん、かすかな人間の声を耳にしたものだから、びっくりしてしまった。
(誰だろう。あのように小さい声で、一生懸命にしゃべっているのは?)
先生は不思議に思って、声のする方を、しきりにさがしてみた。その声は、どうやら、機械の中から聞えて来るようであった。先生はますますおどろいて、
(はて、このように、機械をつみ上げた中に、誰かが、かくれているのだろうか)
しかし、それはどうも、ありそうなことと思われない。その声は大変小さい声であった。いや、むしろ大変遠い声だと言った方がいいであろう。小さい声だが、大変はっきりした言葉である。それがしきりにしゃべっているのである。
「……だから、我々は、短い時間のうちに、この重大な仕事をやってしまわなければならない。さもないと我々火星兵団が、危険を冒し、こうして地球上へ来たことが、まったく、むだになる。……」
はっきりと、そういう声が、新田先生に聞えたのである。
先生は改めて、びっくりし直した。なぜと言って、この言葉の中には、明らかに、「火星兵団」と言う言葉があった。それから「こうして地球上に来たことが……」などと言っている。この言葉は地球の上で、火星兵団の中の一人が、しきりにしゃべっている言葉らしいことがわかる。それにしても、人間にわかるような言葉(実にその言葉は、日本語だったのである)を使っているのはなぜであろうか?
先生はあることに気がついた。
新田先生は、積んである機械の箱の中に、そっと手を差入れた。
幸いにも、箱の蓋があいているものがあったので、中の機械をさぐることは、思いの外やさしかった。
(おお、これは妙なものだ。電話機のような形をしているぞ)
先生は、手さぐりでそれをひっぱり出した。それは小さな胸あてのようなもので、真中には、送話機の口と同じに、小さいラッパのようなものがついており、またその胸あての両側からは、お医者さんが使う聴診器のような管が二本、かなり長くついているのであった。例の小さい声は、確かにこの機械の中からしているのであった。
(これは、不思議だ)
先生は、その聴診器のゴム管みたいなものを、耳の中に入れてみた。しかし、何の音もしなかった。さっきまで、聞えていた例の小さい人間の声もしなくなったのである。
(変だぞ)
そこで先生は、ゴム管みたいなものを、耳の穴からはずした。すると、また前のように、どこからか、小さい人間の声が聞えて来るのであった。先生は、あせりながら、その機械を、ひねくり廻しているうちに、やっと、声の出るところがわかった。それは、胸あてのようなものの真中についているラッパから聞えて来ることがわかった。
(あっ、ここから聞えるのだ!)
先生は、耳にあてた。しばらく聞いているうちに、先生は重大なことを見つけた。それは、丸木の声と、この小さなラッパから出て来る声とが、いつも同じ時に大きくなったり、また、とまったりす
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