怪人丸木とおなじ姿に変ってしまった。
「こういう姿をしておれば、しばらくでも火星人の目をごまかすことが出来るであろう。その間に、何とか次のことを考えよう」
 その時、壁穴のそとでは、先生のあとを追って来た火星人の、ひゅうひゅうという声がした。先生を探しているのだ。
 先生は、もうその時、別の入口から、外に出ていた。あたりには、同じような姿をした火星人が、しきりに、走りまわっていた。もちろん、黒マントのない、はだかみたいな火星人も、たくさんいた。
 黒マントを着ている火星人は、おなじ仲間の中でも、すこしはえらい火星人のようで、先生が、黒マントを着て、前に進むと、はだかの火星人は、さっとからだを横飛にして、先生のため道をあけるのであった。
 こうして、先生は、火星人の中に、うまく、まぎれこんでしまった。
 このころ、先生を追いかけていた番人たちも、もう、あきらめてしまったようである。
 先生は、火星人の間をすりぬけて、穴の入口から外へ飛びだした。
 先生は、久方ぶりに、新しい空気を吸って、元気をとりもどした。
 だが、外は真暗《まっくら》であった。その上雨風がはげしく、この山中をたたいていた。時おり、ぴかぴかと電光が光って、ものすごさを加えた。
「ああ、たいへんな嵐だ!」
 先生は、一度、雨の中に飛びだしたものの、吹飛ばされそうになったので、また穴の入口へもどらなければならなかった。
 その時であった。あたまの上はるかに、また、ごうんごうんと雷とも違う、気味の悪い音がしはじめた。
 嵐の中に気味の悪いごうん、ごうんという音は、また大きくなって来た。
 がらがら、ぴかぴかと、雷がひっきりなしにあたりの山々に落ちた。そうして、足の下に踏まえている大地が、地震のように揺れた。
 その時先生の目は、一隻の火星のボートのすがたを捕えた。はげしい電光が、あたりを昼間のように明かるく照らした時、先生の立っているところから百メートルぐらい先に、火星のボートがあざやかに着陸するところを見てしまったのであった。
 火星のボートは、例の通り大きな塔のような形をしていた。そうしてボートは、電光に見まがうような明かるい光に包まれながら、空中から降って来たのである。そうして、地ひびきとともに大地に突きささったのである。
 先生は火星のボートが、地面に突きささってから、少し左右にゆらぐところまで、はっきり見てしまった。でも、思いの外やわらかく大地へ突きささった。何かよい方法があって、大地に近づくとともに、スピードをゆるめる仕掛がついているらしい。
 そのうちに、また次の新しい火星のボートが降って来た。一隻ではなかった。二隻、三隻、四隻……いや、数えているひまがない。おどろくべきたくさんの火星のボートは、百雷が一時に落ちる時のように、巨大な光と音とを立てて、空中から舞いおりた。雨と風とは、いよいよはげしさを加え、雷はしきりにあたりの山中に落ちた。
 火星のボートと落雷と、どっちがどっちだかわからないような、恐しい光景であった。
「ああ――」
 と、新田先生は、ため息をついて、全身を雨に打たれながら、もの陰にたたずんでいた。一体これからどうなるのであろうか。


   34[#「34」は縦中横] 火星兵団


 大雷鳴の中に、山梨県の山中に着陸した火星のボートは、その数およそ五、六十隻であった。
 これこそ火星兵団の敵前着陸だ。
 しかるに、地球の人類は、この恐るべき兵団を、やすやすと着陸させてしまったのである。もっとも、誰がこのような火星兵団の襲来を、あらかじめ考えていたであろうか。
 我が日本について考えてみても、これは全く意外な出来事であった。また、そうなるまでの事情はともかくも、いいことではなかった。我が日本は昔から、日本本土を敵に占領されたことはなかった。いくら地球外に住んでいる火星人の襲来だからといって、本土の一部を占領されたことは、決していいことではない。新田先生は、闇の中にたたずみながら、くやしさに涙をぽろぽろと落した。
 たくさんの火星のボートは、何《いず》れも皆着陸が終ったらしい。空中を飛ぶあの大きな音も、もう聞えなくなった。そうして、火星のボートは、船体から例のうすもも色の光を出して、あちこちに塔を並べたように立っていた。
 時々妙な怪音が、ひとしきりやかましく耳を打つのであったが、それは、今着いたばかりの火星人たちが、点呼を受けているのであろう。
 今度はかなりたくさんの火星人が、着いたらしいのであるが、その割に騒ぐ様子もなかった。
(ははあ、それでみると、火星人はかなり教育程度が進んでいると見える)
 と、新田先生は、心の中でひそかに、そう思ったのであった。
 先生は、この上は、何とかして、ここを抜出して、この一大事を出来るだけ早く、警察
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