るのである。
(ふうん、この機械を使えば、火星人の言葉が日本語に直って聞えるのだ。すばらしい機械を見つけたぞ!)
 変話機だ!
 変話機が見つかったのだ。
 新田先生は、鬼の首をとったように嬉しかった。変話機のラッパの方に耳をあて、またゴム管の穴を怪人丸木の方に向けると、丸木が、火星人の言葉でしゃべっていることが、みな日本語に直されて、ラッパから出て来るのだった。
 この機械は、あべこべにして働かせると、日本語が、火星人の言葉に直るのであった。そういう場合は、火星人は二本のゴム管の穴を耳に近づけ、ラッパを人間の方に向ける。つまり、その時はラッパが一種のマイクの働きをし、ゴム管のある方が、受話機になるのであった。
(しめた。これはいいものが手にはいった。ようし、丸木が何を言っているか、しばらく聞いていてやろう)
 と、新田先生は、息を殺して、変話機から聞えて来る丸木の言葉に聞入ったのであった。
「……だから、我が隊は、出来るだけ早く、この仕事をすまさなければならない。地球の人間に勘づかれたら、それから後は、人間どもは用心を始めるから、人間をつかまえることが、ますますむずかしくなる。……」
 丸木は、人間をつかまえることについて、話をしているらしい。人間をつかまえるといって、一体誰をつかまえるつもりであろうか。
 丸木の言葉は、なおも続く。
「……我々の計画では、男と女とが同じ数だけ入用だ。ぜひとも男を五百人、女を五百人集めてくれ。このうち、我々が集めて持って行くのは、生まれたばかりの赤ん坊が百人、五歳ぐらいの小さい子供が百人、それから十歳から十五歳ぐらいの子供が百人――つまり子供は三百人だ。その上に、二十五歳ぐらいの若い大人が百人、それから四、五十歳の大人が百人、これでちょうど五百人だ。その外の人間に用事はない。……」
 丸木は、とんでもないことを言っている。
 丸木は、隊員に向かってなおもしゃべりつづける。新田先生は、変話機にかじりついて、一生けんめいに、丸木の話をぬすみ聞きしている。
「……どうだ、わかったろうな、みんな。人間に近づいた時は、さっきも言ったように、なるべく相手の顔を見ないようにしろ。こいつをさらうのだと見当をつけたら、足音を忍ばせて、うしろからどんどん追いせまり、さっき教えたような方法で、早いところ、袋を頭の上からかぶせ、それがすんだら、すぐさま、人間の足を、こういう工合にかついで、例の人間箱の中に入れてしまうのだ。いいかね。……それが出来れば、後は、出来るだけ気を落ちつけて、その人間箱を自分のそばにならべて、ゆっくりゆっくり歩いて行くのだ。その時そわそわしていようものなら、人間箱をつきたおして、せっかくの獲物《えもの》が人間に気づかれてしまったり、また、お巡りさんや刑事に怪しまれて、かえってこっちがとりおさえられるから、出来るだけ用心をするんだぞ」
 新田先生は、これを聞いていて、ますます驚いた。丸木たちは、こんな手で、人間を五百人もさらって行くつもりなのである。
「隊長!」
 と、火星人の一人が、違った声を出して丸木に呼びかけた。
「何用か、三八九」
「ねえ隊長、わしは、どうも人間というものが恐しくてならんのです。ほかの役にかえてくれませんか。たとえば、草とか木とかを集める方へ廻して下さい」
「だめだ、だめだ。われわれは、はじめから一等むずかしい役をすることにきまっているのだ。むずかしい役をやるのだから、われわれは火星兵団の中でも、特別にごほうびをもらっているのだ。姿だって、人間そっくりの道具をもらっているではないか」
 怪人丸木と、その部下の火星人とのあいだに、とんでもない話がつづいている。それは、地球の人間を捕えることについてである。
 これを聞いていた新田先生は、顔色をかえた。丸木は、この前、
(地球がこわれる前に、君たち地球の人間を出来るだけたくさん、すくってあげたいと思っているのだ)
 と言ったが、その当時、丸木たちの親切に、お礼を言ったものだ。ところが、今聞いておれば、丸木は、
(人間を集めるのだ。人間を捕えるのだ!)
 と、部下に話をしているのであった。丸木たちは、人間を捕虜にして、火星へつれて行くつもりらしい。
「けしからん。地球人類が、火星人の捕虜なんかになってたまるものか」
 と、新田先生は、ものかげでひとり歯をくいしばった。しかし、そうは言うものの、地球のこわれる日はもう目の前にせまっている。その上、この洞穴《ほらあな》で見ていてもよくわかるように、智慧にかけては人間よりも火星人の方がずっと進んでいるようだ。たとえば、火星人の持っている火星のボートだって、じつにすばらしいものである。人間の力では、とてもあのようなものをつくることは出来ない。だから、まともにたたかえば、これはどうしても
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