ている体とは、そのつくり方が、たいへん違うようだ。
 新田先生は、この時以来、どうかして、火星人の体のひみつを、ぜひ早く知り尽くしたいものだと考えるようになった。火星人の体のひみつが、はっきりわからなければ、こうして火星人とつきあっていても、何だか安心していられない気がした。
 先生の組みうちの相手になったその火星人は、すっくと立ちあがったが、それで引込むのかと思ったら、そうではなく、またじりじりと先生に向かって来た。
 先生は、もうかなり疲れていたが、ここで弱みを見せては、敵になめられると思い、
「まだ来るか、来るなら来い!」
 と、大手をひろげた。
 すると、さきほどから、両人の組みうちを、かたわらから、じっと見ていた丸木が、急に両人の間に割って入り、何だかわけのわからない言葉をぺらぺらとしゃべった。
 それはどうやら、らんぼうな火星人を叱りつけたものらしい。先生の敵は、すごすごと廻れ右をして、仲間の後へかくれてしまった。
「新田先生」
 と、今度は丸木が先生に話しかけた。
「これ以上、火星人をおこらせないのが、身のためですよ。さっきの話は承知してください」
 怪人丸木が、新田先生におしつけようとするのは、山梨県一帯の山中を、火星人にゆずりわたせということだった。
「そんなことを言っても、私には、きめる力がないのだ。それは、政府へ申し込んで下さい。私は、そんなことには何の力もない、一人の教師なんだから……」
「ふふふふ、こまった人間だ」
 と、丸木は、うす笑いをしながら、
「わしの目から見れば、先生であろうが、政府の役人であろうが、どっちも地球の人間と見ることにかわりはない。わしは、これ以上くどくど言うことはやめます。要するに、わしたちの相手は、人間でありさえすれば、誰でもいいのだ。人間どうしの相談なら、先生だとか、役人だとか、そんなうるさい資格が必要かもしれないが、火星人対地球人の相談には、人間が勝手にきめた地位や資格のことを考える必要はないのだ」
 と、丸木は少しむずかしいことを言ったのち、
「ねえ、先生。ぐずぐずしていると、あなたがたの足の下にふみつけている地球が、煙のようになって、ふきとんでしまうのですよ。わしたちは火星人だから、そんなことになっても、一向こまりはしない。こまるのは、あなたがた地球の人間たちばかりだ。そうでしょうが」
 先生は、だまっていたが、もちろん、丸木の言うとおりにちがいなかった。
「だから、先生。あなたは、地球の人間を代表して、わしに返事をしてくれればいいのです。先生がうんと言って承知をしてくれれば、わしたちは出来るだけの力を出して、先生をはじめ地球の人間をすくうつもりです。人間だけではない、牛や馬や犬や猫や、それから桜の木や、松の木や、かつおや、ひらめのような魚や、それから、鶴や蛇や、地球上のありとあらゆるものを、一通りすくい出して、火星につれていってあげる」
「えっ、人間ばかりでなく、たくさんの動物や植物までも、のせて行くのですか」
 新田先生は、火星人丸木の言葉を、おどろいて聞きかえした。
「そうですとも」
「なぜ、そんなことをするのですか。一人でも、多くの人間をのせて行ってもらいたいと思うのに、牛馬や木などに、場所を取られては、惜しいです」
「いや、わしたちは、こう考えているのです。人間だけを火星に持って行ったのでは、向こうで、人間がくらしに困るかと思う。だから、あらゆる植物や動物を、持って行ってあげようと言うのです」
「なるほど。そういうわけですか」
 新田先生も、丸木の言葉が、ようやくわかったような気がした。
「では、そのへんで、わしたちの申出を、承知してくれますね」
「いやいや、丸木さん」
 と、先生はあわてて、丸木をさえぎり、
「その話は、いくら私に相談をかけられてもだめです。政府に話をして下さい」
 すると丸木は、ぶるぶると体をふるわせ、
「どうも君は話のわからない人間だ。もうよろしい。わしたちはこんなことで、ぐずぐずしておられないのだ。兵団長は、もうこれで十五へんも、話はきまったかと聞いて来られた。この上、ぐずぐずしていると、わが火星の大計画はくずれてしまって、とりかえしのつかんことになる。……」
 と、丸木は妙なことを口走って、しきりに足ぶみをした。
 新田先生は、丸木の言った言葉の中から「兵団長」だの「わが火星の大計画」だの「とりかえしがつかん」だのと言う謎のような言葉を、頭の中でおさらいをしてみて、不審顔であった。


   32[#「32」は縦中横] はいって来た者


 新田先生が、火星人の申出を、うんと言ってきかないので、丸木は、とうとうおこってしまった。
 丸木は、うしろをふりかえって、奇妙な声をあげて、両手を、頭のうえで振った。
 それが、合図であったらし
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