、うらめしそうにたずねた。すると、蟻田博士は首をふって、
「いや、地球が大丈夫だと、はっきり知ったのは、たった今地球のすがたを、夜の大空に仰いで、はじめて知って安心したんだ」
「でも、さっき博士は、前からそれを知っていられるような口ぶりでしたよ」
「ああ、あれかね。あれは、こういうわけだ。もし、地球とモロー彗星とが、宇宙で衝突すれば、火星のうえにいるわれわれにも、なにか大きな振動を感じるはずだし、また大きな光が宇宙にひろがるから、火星のうえでも、大さわぎがはじまるわけだ。だが、衝突の時刻をすぎても、すこしもそんなことがなく、たいへんしずかだったので、わしは、かねて月がすこし異状をおこしかけていたことを思いあわせ、ははあ、これは、地球がうまく、あやうい目をのがれたんだなと、さとったんだよ。それだけのことじゃ」
蟻田博士の予想は、ほとんどあたっていたが、月の影響がはいって来るところが、すこし予想がはずれたのである。しかし、地球があやうい目をのがれたことは、神のおまもりと、いうほかはあるまい。
「……地球は衝突からすくわれた。しかしこれからは、火星人と競争することになるから、われわれ地球の人類は、これまでよりも、勉強をしなければ、大宇宙の指導者の地位を、火星人にとられてしまうよ。勉強だ、大勉強だ」
蟻田博士は、拳をふりながら言った。千二も先生も、つよくうなずいた。
底本:「海野十三全集 第8巻 火星兵団」三一書房
1989(平成元)年12月31日第1版第1刷発行
初出:「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社
1939(昭和14)年9月24日〜1940(昭和15)年12月31日
「東日小学生新聞」東京日日新聞社
1939(昭和14)年9月24日〜1940(昭和15)年12月30日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:kazuishi
2007年1月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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