っ、地球は、ちゃんとしているのですか。モロー彗星は、地球に衝突しなかったのですか」
千二は、とどろく胸をおさえて聞いた。
四月四日の十三時十三分十三秒に、モロー彗星は地球に衝突するはずだった。ところが、今は、その時刻をすぎているのに、地球はあいかわらず、きらきらと天空に輝いているのであった。
なんという意外な出来事であろう!
「ああ、ゆめを見ているのじゃないかなあ」
新田先生は、うめくように言った。
千二も、地球はかならずこわれるものと思っていたので、こうして地球が、ちゃんとしているのを見ると、ゆめのような気がしてならなかった。そのとき、蟻田博士が、しんみりとしたこえで言った。
「非常な幸運であったといえる。モロー彗星は、当然地球に正面衝突するはずだったのだ。ところが、思いがけないことがおこった。それは、モロー彗星が地球に衝突する前に、月がモロー彗星の方へ近づき、両方で引張りっこをはじめたのだ。だから、モロー彗星は、地球のそばまで来て、もうすこしでぶつかるというところで、月のために軌道が曲ってしまったんだ。だから、地球は、あやういところで、モロー彗星に衝突されないですんだのだ。どうだ、わかったかね」
「なるほど、なるほど。そんなうまいことがあったのですか」
「ははあ、それはおどろいたなあ」
月が、地球をまもったといえるではないか。
「じゃあ、博士。地球に住んでいる人には、異状がなかったでしょうね」
「さあ、それは、どうかなあ。多分月の軌道もちがったことだろうし、モロー彗星とすれちがうときに、颱風《たいふう》の何十倍かも大きいような大風雨なども起ったり、地球磁気の影響で、思いがけないことがあったり、また、そのようなことが、相当地球の人類をおどろかしたことだろうが、とにかく、外から見たところでは、あのように地球は、あいかわらずきらきらと光っているのだから、そう、しんぱいしなくてもいいと思う」
月が、地球をモロー彗星からすくったとは、なんという、うつくしいことであろう。まるで戦場で、愛馬が主人の兵士を、敵弾からすくったようなものではないか。
蟻田博士を中に、千二と新田先生とは、きらきら輝く地球の方をじっと見つめたまま、うごこうともしなかった。
そのとき、千二が、
「博士は、地球があやうい目からすくわれたことを、前から知っていられたんですね」
と、すこし
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