かりにぶつかるので、平気にとりすましてはいられないのである。千二となると、この少年は、なまじなんにも知らぬだけに、かえって先生よりも、ずっと楽な気持でいた。
 だから、三人の中で、このところ一番やつれの見えるのは、新田先生であった。それも、やむを得ないことで、先生にたいして同情しなくてはならない。
「博士、地球とモロー彗星の関係は、そののち、どうなったでしょうか」
 おお、モロー彗星のことか! 先生も千二も、ともに丸木艇を追うのにいそがしく、モロー彗星のことさえ、すっかり忘れていたのであった。さっきの晩餐会が、先生の気持をゆるめ、そうして今まで忘れていた大切なことを、一度に思い出させたのであった。
 先生が、それを口にすると、千二少年も、にわかにそれに気がつき、
「ああ、そうだ。モロー彗星は、もう地球に衝突するところでしたね。ああ、たいへん。どうなったでしょうね」
 と言って、先生の顔と博士の顔を、見くらべた。
「ああ、モロー彗星のことか」
 と、博士は、なにごとかを考えるかのように、顔をあげて天井の隅を見つめた。
「わしの記憶に、まちがいがなければ……」
 と、蟻田博士は、大きく息をして、
「モロー彗星が地球と衝突するのは、あと二十四時間後の出来事だ」
 と言って、新田先生と千二との顔を見まわした。
「えっ、あと、二十四時間後ですか。もうそんなに、さしせまりましたか。もっとも我々は、丸木艇とたたかうことに夢中になっていて、時間のたつのを、すっかり忘れていました」
「多分、それにまちがいがない。なお、くわしいことは計算表を見てもいいし、望遠鏡で測って見てもいい」
 すると、千二が、
「博士、我々が火星につくのと、モロー彗星が地球に衝突するのと、どっちが先ですか」
 と、たずねた。
「さあ、それは、だいたい、同じ時刻になろう。いや、火星につく時刻の方が、すこし、早いかもしれない」
「ここから、地球へ引きかえすと、モロー彗星の衝突する前に、地球にもどれますか」
 博士は、首を左右にふった。
「あ、もう、間に合わないのですか」
「そうじゃ。もうおそい。地球のことは、あきらめなければならない」
「えっ。もう、どうしても、地球の上にすんでいる人たちは、すくえないのですか」
「どうも、しかたがない。残念だけれど」
「ぼくだけが、大空艇に乗るんじゃなかったなあ」
 千二は、そう言
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