した。そういう仕掛のあることを知らないと、まるで魔術をみているようですね」
「そうだ。科学知識のない人や、勉強の足りない人は、なんでも魔術だと思うのだよ。百年も前に死んだ人を、今の世の中に、もう一度息をふきかえさせてみると、この大空艇などはもちろんのこと、ロケットでも飛行機でもテレビジョンでも、みんな魔術としか、見えないだろう」
と、蟻田博士は、しみじみ言った。
その間に、ごちそうは、順番に、みんなの前に並んだ。あとからあとへと、いろいろなごちそうが、穴の中から、せりあがってきた。いずれもみな深い器の中にはいっていた。これは大空艇が、ときどき左右にゆれるせいであった。
「さあ、始めましょう。ではロロ公爵とルル公爵の御健康を祝して、乾杯します。おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」
一同は、杯をあげた。
そのとき、ロロ公爵が立ちあがり、
「ちょっと、ごあいさついたします。わたくしと弟ルルとは、すでに命のあやういところを、蟻田博士に、助けていただき、地球へつれてこられました。それからこっち、五年という長い月日を、いろいろと力づけてくださったり、ことに弟の病気をなおしてくださって、まことにありがたいことです」
と、ロロ公爵は、頭を下げた。
ロロ公爵のあいさつは、なおもつづいた。
「わが火星には、生物がいます。地球にも、人間というりっぱな生物がいます。このひろびろとした宇宙をみわたしますと、ずいぶんたくさんの星が見える。何億か何十億か、ほんとうのところは、とてもかぞえきれないでしょう。しかるに、そのうえに、生物がすんでいることがわかっているのは、わが火星と地球だけである。しかも、火星と地球とは、きわめて近くにいる。現在の距離は、たった五千六百万キロである」
ロロ公爵は、たった五千六百万キロだと言った。
(五千六百万キロが、たったかしら)
と、千二は、目をぱちぱち。
公爵は、ことばをつづけて、
「そういうわけで、火星と地球とは隣組同志であります。もし宇宙に隣組とか隣保班とかをつくるのだったら、わが火星と地球とは、同じ組にはいるべきはずです。助けられたり助けたりの、そういうお隣同志でありながら、両方がけんかをしているのは、よくないことです」
「なるほど」
と、新田先生が言った。すると、ロロ公爵は、先生の方へ、ちょっと
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