飛出して、火星兵団と戦うことになれば、ずいぶん地球を離れることになろうから、その間、博士におなかをすかさせては、一大事だと思ったからである。……ある朝、突然、蟻田博士は部屋へ戻って来た。約束どおり、三日の後のことであった。
53[#「53」は縦中横] ガスピストル
蟻田博士が帰って来た。
それは、約束にたがわず、ちょうど三日目のことであった。
「あ、博士。うまくいきましたか」
新田先生は、何よりもまず、そのことを聞かずにはおられなかった。
「ああ、まずうまくいったつもりだ。これから毎日、十トンずつの十号ガスの原液を作り出せることとなった。これだけあれば、火星人と戦っても、まず大丈夫だろう」
「ほう、そんなにたくさん出来ますか」
と、新田先生は目を円くした。
一体、どこまで蟻田博士はえらいのだか、そのえらさ加減は、底が知れない。知らない者から見れば、博士はまるで魔術師のように見える。しかし博士は魔術師ではない。六十年近くというものを、研究にささげたそのとうとい努力の結果である。
「その十号ガスの原液は、どこにあるのですか」
「水道のように、管から出るようになっているよ。原液製造機械が動くと原液が出来る。それを地下タンクにためる仕掛になっている。そのタンクには、別に圧搾空気を使うポンプがとりつけてあるから、管の栓をひねると、その原液は水のように、いくらでも出て来るのだ」
博士は事もなげに言う。
「ははあ、驚きましたねえ。ところで、その原液は、私たち人間にかかるとどうなりますか。やっぱり体が蒸発してしまいますか」
「いや、そんなことはない。人間の体を蒸発させるような、そんなものではない。しかし、何か作用があると思われるが、そのことは試験をしているひまがなかった。何分にも、早くこれを使わないと、火星兵団のため、崩壊前の地球を、すっかり占領されてしまうことになるからのう」
と、博士はささやくように低い声で言って、持っていた荷物を開くと、中からピストルに似たへんな器具を取出した。
「博士、それは何ですか。変った型のピストルみたいに見えますが……」
と、新田先生は言った。博士が荷をといて取出したのは、まさにピストルとしか見えないものだった。ピストルの胴を、うんとふくらませて、ひだをつけ、握ると、こぶしをすっかりかくしてしまうようなものだった。
「これ
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