「えっ!」
新田先生は、自分の耳をうたがった。
(新田、だまってついて来い!)
と、博士は言って、先に立った。
新田先生は、博士の言葉つきの中に、何かしら、いつもと違った感じを受取った。
博士は、部屋の片隅にある犬のくぐり戸のようなまるい形の扉をあけて、次の部屋へ這《は》いこんだ。先生も、そのあとに続いた。
這いこんだところは、紫色の電灯がついていたが、実に奇妙なところであった。まるで、鉄管の中にはいったような感じがした。なぜまあ、このように変なところばかりが、あるのであろうか。
先生の前には、博士が、ごそごそと音をさせて這っていく。後から声をかけたくて、しかたがなかったが、博士におこられてはたいへんと、先生はがまんして、あとからついていった。
二メートルばかり、いったところで、小さな部屋に出た。部屋というよりは大きな樽の中にはいったという感じである。
曲面をもった壁は、にぶい金属的な光をもっていた。この部屋の中にはバンドのついた腰かけと、天井から吊革のようなものが、ぶら下っているだけで、外に何もない。
博士が、何かごそごそやっているうちに、先生の後で、ぎいっと音がした。ふりかえって見ると、今這いこんで来た鉄管の出口が、すっかりふさがれていた。全く妙な部屋であった。先生は博士の心をはかりかねた。
「うむ、これで安心だ。もう、大きな声を出してもいいよ」
博士の声は、いつもとは違って、たいへんやわらかに響いた。
「博士、私をこんなところへ連れて来られて、何をなさろうというのですか」
さっそく、先生はたずねた。
「おお新田。これからわしは、お前に、はじめて本心をうちあけるよ」
「えっ、本心?」
先生は驚いて博士の顔を見つめた。
本心を打明ける!――と、博士は言ったのである。
「どういうのが、博士の本心ですか」
と、新田先生は、せきこむようにして問いかえさずにはおられなかった。そう言えば、さっきから博士の態度が、いつもとは、たいへん変っている。何か重大なわけがあるのだ。
「のう、新田」
と、博士は両手をきちんと膝の上において語り出した。
「わしは、いよいよこれから火星兵団とたたかいをはじめるよ。いや、お前の驚くのももっともだ。わしは、いつも地球の人間のことを悪く言って、むしろ火星人の味方のようにさえ見えた。これにはわけがあるのだ」
と、博士は
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