わかりませんが、先を話して下さい。海の中に逃げこむと言っても、どうすればいいのですか」
と、客は不思議がる。
「つまりその、潜水艦に乗っているのです。陸はいくらぐらぐらしようと、また海上にどんなに波が立とうと、海の中は、あんがい静かです。たとえぐらぐらしても、潜水艦なら、どんなにゆれても大丈夫です。上と下とがあべこべになっても、心配はありません。だから命が助かりたいと思ったら、ぜひ潜水艦の中へ、ひなんをなさるのですな」
「なるほど、潜水艦はなかなかいい思いつきですなあ」
と、客は言ったが、
「しかし、わたしたちを乗せてくれる潜水艦は、どこにいますかねえ」
と、たずねた。すると相談所長は、
「さあ、そこまでは知りませんよ。手前のところでは、命をのばす御相談にあずかるだけで、あなたを乗せてくれる潜水艦がどこにいるか、そんなことまで世話をやくわけにはいきませんよ」
と、つっ放すように言った。
人々が難儀をしている時に、ろくでもないことを言って金もうけをしようという、けしからん者がたくさん出て来た。
モロー彗星の光は日とともにつよくなり、そうしてますます大きくなっていった。
地球の人類の不安は、モロー彗星の大きさとともに増していった。町には気が狂った人が、だんだん人数を増していった。
しかし、一部の人間はおちついていた。すっかり覚悟をきめてしまったのであろうと思われるが、いつものように平然として仕事をつづけていた。
その人たちが言っている話を、横あいから聞いてみると、こんな風であった。
「どうです、モロー彗星も、だいぶん大きく見えるようになりましたね」
「そうですねえ。あなたは、どちらへ御ひなんなさいますか」
「いいえ、べつにひなんはいたしません。このままにしています」
「ははあ、どうして、ひなんなさらないのですか」
「いや、さわいでも、どうなることでもないのです。何しろ相手は彗星ですからねえ。我々に、彗星を動かす力があればともかくもですが、そんな力はないのですから、後はもう自然の成行にまかせておくよりほか仕方がありません」
「たいへんおちついておいでですね。しかし、死ぬことはおいやでしょう」
「べつにいやとも思いません。いやだと思っても、どうなることでもないのですから。それよりも、わたしは、たいへん楽しいことに思っています。つまり、地球は生まれてから八十
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