言った。だから植物であるというのは、答えになるではないか。
 それから又、そこの檻の中に病気で弱っている火星人ルルは、博士が日本アルプスの山中から掘出して来たという草の根を、くさりかけた体にぬって、たいへん気持がよくなったというが、この薬は動物にはきかないという。火星人は植物だからきいたのではないか。
 まだある! 火星人の残酷さだ!
 火星人は、情というものを全然知らないようである。情心《なさけごころ》は、動物だけにあるもので、植物にはないのだ。この前火星人丸木は、銀座で平気で、人殺しをやったではないか。
(火星人は、植物にきまった!)
 新田先生は、長い歎息をした。
(全く情心というものを持合わさない植物なればこそ、火星人は、あの通り残酷なんだ! ああ何という恐しいことであろう!)
 新田先生は、たいへんな結論を引っぱり出したものである。
 火星は植物の世界だ! 植物が、火星を治めているのである。ちょうど、人間が地球を治めているように! 植物がいばっている星! 植物が高い文化をもっている星! それが火星なのだ。
 新田先生は、火星へ行ったこともなければ、火星の世界をくわしく研究したわけでもなかった。しかし、火星の上で植物が万物を支配している世界を想像してみることは出来た。ああ、それは何という風がわりな興味のつきない、恐しい世界であることか!
(ゆだんはならない! 火星は植物が治めているし、わが地球は人間が治めているのだ。この二つのものは、とても手を握ってつきあっては行けないであろう。火星人は、火星兵団を送って、もはや働きかけているのだ。ゆだんはならない!)
 ゆだんはならない。――とは、佐々刑事が宇宙電話でもって、地球に住む者どもに対して警告して来たことだった。恐らく佐々刑事は、火星へ上陸するか何かして、火星人がむごたらしいことを平気でやるのに驚いたのであろう! あの心臓の強い佐々刑事が驚くとは、よほど目に余ったことが、火星の上で行われているに違いない。
「ああ大変なことになった!」
 と、新田先生は、むごたらしい火星人の幻影を両手で払いのけつつ、うめきごえを発したのであった。ああ、怪また怪!
 新田先生が、火星人のおそろしい正体について、推理をくみ立てている間、蟻田博士は、向こうを向いて、しきりに火星人の兄弟ロロとルルの寝顔を見まもっていた。
 ところが、その
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