のなぞの言葉にぶっつかった。
(火星人は動物でない――と言う。では、いったい何であろうか)
 動物でない――と言うと、植物か鉱物か二つのうちの一つであろう。しかしそれはあまりに変なことだ。
 なぜと言って、人間は動物であり、犬や猫も動物である。動物は、文字で書いても、動くものと書く。だから動物は、動けるのである。植物や鉱物は動けない。
 そうなると、佐々刑事の宇宙電話も、とりとめのないことをしゃべったとしか考えられない。動物でなければ動くことが出来ないのだから……。
 だが、待てよ。
 ここに一つ考えのこしたことがある。鉱物が全く動かないことはわかっているが、植物の方は、全く動かないものばかりとも言えない。たとえば、蟻地獄と言われる草や、蠅取草《はえとりそう》のようなものは、自分で動いて、蟻とか蠅とかを捕えるという話である。アミーバという下等植物は、自分で体の形をかえて水中を泳ぐ。
 またいつだか見た文化映画で、『植物の生長』というのがあったが、植物の蔓《つた》が、まるで蛸《たこ》の脚《あし》のようにぐらぐらと動きまわって、どこかにまきつく棒とか縄とかないかと、しきりにさがしもとめている有様がうつっていた。その映画を見ると、植物がまるで動物とおなじように見えた。
 そんなことをだんだん考えて来ると、植物は全く動かないものだとは言いきれなくなる。さあ、問題はそこだ!
(アミーバも動く、蠅取草も動く!)
 火星人の正体を、ほり出そうとして、新田先生の推理はつづく。
 動物でない火星人!
(では、火星人が、アミーバや蠅取草のような動く植物であったとしたら、どうであろうか?)
 先生は、考えをそこまで持って来た。そこには、恐しい大驚異の世界が開かれていた。そうだ! 動く植物! 火星人なるものは、進化した動く植物だと考えては、どうであろう!
「ああ、驚くべきことだ。ああ、恐しい世界だ」
 と、新田先生は、思わず口に出して叫んだ。
 そばで蟻田博士は眠れるロロとルルを見まもっていたが、とつぜん新田先生が声を出したので、後を向いて先生をにらみつけた。
「おい、静かにせんか」
 新田先生は顔をまっ青にして、興奮のためにふるえていた。
(わかる、わかる。火星人を、進化した動く植物だと仮定して考えると、これまでに疑問だったことが、大分うまく解ける!)
 蟻田博士は、火星人は動物でないと
前へ 次へ
全318ページ中198ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング