じゃ。その手柄にめんじて、わしは、これまでのお前の罪を許して、もう一度、門下生として教えてやろう」
博士は、横柄《おうへい》な口をきいた。
蟻田博士のきげんが、大へんいいので、新田先生は、この時とばかり博士に聞いた。
「博士、モロー彗星が地球にぶつかる日が、いよいよ近づきましたが、どうにかして人類を助ける工夫はないでしょうか」
博士は、ひげをふるわせ、新田先生の顔をじろりと睨み、
「助ける工夫はない。たとえ、助ける工夫があっても、今日のような、おろかな人間どもを助けることは無用だよ」
「そ、そんな、らんぼうな考えは、よくないと思います」
「わしは、今日の人類には、あいそがつきているのだ。そんな連中を助けてみたって、始らんではないか」
「博士、そんなことを言わないで、人類のために力を出してやって下さい。博士が本気になってやって下されば、モロー彗星衝突の惨禍から、かなりたくさんの人間が救われるのではないでしょうか。救われれば、どんなに心がけのわるい人間でも、心を入れかえるに違いありません」
「わしは、そんなことを信じない。助けを乞う時には、ちょっといい人間になるが、助けられてしまったあとは、またもとのように、だらしのない人間に戻ってしまう。ふだん自分勝手な、欲ばったことばかりをして、自分さえよければ、この地球がどうなってもいいなどと思っている、そんな心がけのよくない人間を、助けてみても一向つまらんよ」
蟻田博士は、ずけずけと地球の人類をやっつける。先生も、これには、とりつくしまがなかった。
そこで、話をかえて、
「博士、そこにいる火星人が、お帰りをまっていましたよ。何でも、体がわるいのだそうですね」
と言うと、博士は、
「おお、そうじゃった。すぐさま、手あてをしてやらにゃ」
と、檻の方へ近づいた。
「おお、かわいそうに。今すぐに、よくしてやるぞ」
地球人類は大きらいという博士が、檻の中の火星人に対しては、たいへんやさしくするのは不思議であった。
新田先生は、博士のすることを、じっと見まもっていた。
博士は、鞄と小さな紙づつみとを持って、檻の中にはいった。二人の火星人はまるい頭をあげて、ひゅうひゅうぷくぷくと、喜びの声をあげた。
博士は、奥の方に寝ていた火星人のそばによって、
「薬をやっと作って来た。何しろ火星の上とは違って、この地球の上には、なかな
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