下で何だか、えたいの知れない生物を見たおぼえがある。
 その時、一しょにいた千二少年は、今はここにいない。
 どうなったであろう、千二少年は?
 少年はこの前、この同じところで怪人丸木のため、さらわれてしまったのであった。どうしたのだろう。千二少年は? 無事で生きておればいいが、死んだのではなかろうか。もし千二少年にめぐり会えれば、火星兵団の秘密が、もっといろいろとわかって都合がいいことであろうに。
 先生は階段のところでたたずんだまま、しばらく千二少年と一しょにここへ来た日の思出にふけって、胸がしめつけられるようであったが、やがて、ぽんと胸をたたき、
「いや、過ぎたことを、そんなにくよくよ考えていても、しかたがない。今は、地球の人間を救うため、そうして火星兵団の暴力に手向かうため、どんどん働かなければならないのだ。めめしいことを考えて、涙なんか出していてはならない時なのだ!」
 先生は、自分の心を自分ではげました。そうして、覚悟をきめると、階段をしずかに下りて行った。
 階段の下には何がある? 前に来た時と同じになっているのであろうか。
 下りながら先生は、はっと気がついた。大変重大なことを忘れていたのである。
「これは、うっかりしていた。この地下室から聞えて来る話声は、怪人丸木の声ではなかろうか。それだったら、大変だ」
 先生の足は階段の途中で、しぜんととまってしまった。
 新田先生は、ふたたび自分の心を鞭打った。
(私は、もっとしっかりしなければならない。こうなれば、怪人丸木であろうが、誰であろうが、ぶつかってみるほか、みちはないのだ。我々地球人類の幸福のために!)
 新田先生は、胸の中にそう叫ぶと、今度は決心もかたく、しずかではあるが、たしかな一歩一歩をふんで、地下へ下りていった。
 階段は、右の方へまがっていることも、前と同じだった。下へ下りていくうちに、ぷうんと妙なにおいが先生の鼻を打った。それも、この前かいだのと同じにおいであった。
 先生は、なおも下へ下りて行ったが、急にあかりがとどかない廊下へ出てしまった。
(これは足もとがあぶない!)
 と思ったものだから、先生はポケットに入れて来た懐中電灯を取出そうと思って、そこに立ちどまった。
 その時、先生の足もとが、ぐらぐらと動いた。
「あっ!」
 と叫んだ時は、もうおそい。先生の体はかたむいて、がらがら
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