やっと駈けつけた小学生の一団も、犬が不思議なものをくわえて行くのを見た。
「何かくわえて行ったぞ」
「へんなものが、火星人の胴から出たんだそうだ。あれは皆、ぼくたちのだから、あの犬からうばい返せ!」
そこで、小学生の一団は、大きな犬――それは多分、グレートデーンと言う種類の犬だと思われた――その大きな犬のあとを追いかけた。だが、犬はどこへ逃げこんでしまったか、なかなか行方は知れなかった。犬のくわえて行ったあの不思議なゴムだこの正体も、結局、何が何だかわからなくなった。ただ、人々の記憶に残ったのは、火星人の胴がこわれたこと、そうして胴中から、へんなゴムだこみたいなものが飛出したこと――この二つだった。
大きな犬がくわえていったゴムだこみたいなものは、その後どうなったか、誰も知らない。
その時の小学生たちは、そのゴムだこのことなどがあきらめきれず、いつもそのことを話し合う。
「あのゴムだこは、どうしたんだろうね」
「ああ、あのゴムだこをくわえていったの、大きな犬だね」
「グレートデーンという犬だろう、あの犬は」
「うん。そんなことは、どうでもいいんだ。僕はあの犬をきのう見たよ」
「えっ、見たかい、それでどうしたの。ゴムだこをくわえていなかったかい」
「だめだめ。そんなにいつまでも、ゴムだこを、くわえてなんか、いるもんか。でも、どこかにくわえていって、埋めてあるのかも知れないと思ったからね。僕はあの犬のあとをしばらくつけてみたよ」
「そうかい。犬のあとをつけたのかい。そうして、どうだったい。ゴムだこを埋めてあるところが、わかったかい」
「いや、それもだめさ。あの犬はごみためばかりあさって歩いたが、ゴムだこを埋めてあるようなところへはいかなかったよ」
「へんだね」
「全くおかしいね。第一、あんなりっぱな犬が、ごみためばかりあさるのはおかしいよ。だって、あの犬は三、四百円もする高い犬なんだぜ。飼主が食べ物をやらないはずはない」
「そんなことは、わかりゃしない。モロー彗星が地球と衝突する日が近づいているんだ。どんなりっぱな犬でも、犬のことなんか、かまっていられないよ」
「なるほど、それもそうだね」
「それより、僕は、あのゴムだこについて不思議に思うことがあるんだ」
「えっ、不思議に思うって、何がさ。……」
小学生たちの話は、なおもつづいた。
「だって、そうじゃないか
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