し、また、電柱のそばで電柱と話をしていたようにも、おぼろげながら思い出すのであった。
 ところが、そのうちに、どこからか、足でも引きずっているような音が聞え、それが自分のそばへ近づいて来ることも知っていたのだ。彼は後へふり向こうとしたが、体が言うことをきかなかった。何しろあまりよっぱらっているので……。
 その時、彼は急にからだを引きあげられたように思った。エレベーターが、こんなところにあったかななどと、へんなことを思った。
 ばさり! ぱたん!
 そんな音が聞えたように思う。
 すると彼は、にわかに息ぐるしくなった。が、彼の体は、ひとりでゆらゆらとゆれはじめた。何か乗物に乗っているような気がするのであった。
 その時へんなにおいがした。一体なんのにおいであろうかと彼は考えていた。
 しばらくすると、その乗物がぱたりととまった。すると、乗物の窓がぱたんとあいて、人の顔がのぞきこんだ。それは火星人の顔であったのだが、そんなことには気がつかなかった。
(こんな年よりはだめだ! どこかへ捨ててしまおう)
 と火星人が言ったことも、もちろんその紳士は知らなかった。そうして次に気がついた時、彼は、牛小屋の中に寝ていたのである。火星人のため、牛小屋へほうりこまれたことも知らぬ彼だった。


   38[#「38」は縦中横] ころがる胴


 恐るべき人間狩!
 ラジオがどんなにか警報を発しても、火星人の襲来などと言う夢のようなことを信じない人々は、平気で町を歩いていたものだから、火星人は、ますます図に乗って、帝都を荒して歩いた。
 だが、その中には火星人の方が、人間のためにうまくしてやられた場合もないではなかったのである。
 ある小学校の六年生たちが、ラジオで人間狩のことを知って、だんぜん火星人と戦う決心を定めた。
 小学生たちは、十人ずつ組になって、方々へわなを作った。
 火星人の通りそうなさびしい町の辻をえらんで、そこに丈夫な綱で結び綱のわなを作って、夜のふけるのもかまわず待っていたのであった。
 大手がらを立てた組は、大変いいところへ、そのわなを作った。その小学生の五人は、陸橋の上に待っていた。残りの五人は、陸橋の下にわなを仕掛けた。
 こうして待っていると、やがて例の黒い長マントの火星人が、三人づれで通りかかった。
「ほう、来たぞ、来たぞ。あれはきっと、火星人だよ」

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