、先生の耳のせいか、だんだん大きくなって来るようであった。火星のボートが、ますます近づいて来たのであろう。
 ひゅう、ひゅう、ひゅう。
 ぷく、ぷく、ぷく、ぷく。
 妙な声を立てて、火星人たちが、騒ぎ出した。新しくやって来る火星のボートの着陸の用意で、大変いそがしくなったのであろう。
 新田先生は、その時、またもや穴の奥から、そろそろと這出して行った。
(今こそ、脱走するのに、もって来いの時だろう!)
 この騒ぎのうちに、先生は監禁の手からのがれたいと思ったのである。
 穴の中から外の方へ、そろそろと這って行ったが、幸いにも、さっきの番人がいたところに、誰もいない。
「しめたっ!」
 新田先生は、番人のいないのを幸い、どんどんと、穴の中を這って前進した。
 すると、とつぜん目の前に、ぴかっと光りものがした。
 そうして、火星人から奇妙な叫び声をあびせかけられた。
「あっ、見つかったか」
 先生はおどろいたが、かねて覚悟をしていたこととて、いきなり身をひるがえして、後へ戻ると、壁にぴたりと体をつけた。とたんに後を、風のように行きすぎたものがあった。火星人が、先生の跡を追って、穴の奥の方へ行ったのであった。
「今だ!」
 先生は勇気を出して、またもや、穴の入口の方へ向かって、這って行った。まるで、もぐらのような、かっこうであった。
 しばらく夢中になって、這って行くうち、また前方から光りものが現れて、ぱっとこっちを照らした。
「ちょっ、しまった!」
 先生は、今度はいよいよだめかなと思ったが、もう一度と、またぞろ身をひるがえして、壁に体を押しつけた。
 すると、とたんに先生の体は、ずるずると壁の中にはいってしまった。
「ああっ!」
 先生は、声をあげたが、もう遅かった。先生の体は、もんどり打ってころげ込んだ。
 いよいよ深い底なし井戸へでも、落込んだのかと思ったが、気がついてみると、先生は、うすあかりのともった小さい部屋の中にいた。かくし部屋だ。いや、よく見れば、そこは倉庫みたいなところで、いろいろなものが、ごたごたおいてあった。その中に、先生の目にふととまったのは、黒い長マントと黒い帽子とであった。よく見れば、黒眼鏡もあるではないか。
 先生はあることを思いついた。
 黒マントに黒帽子に黒めがね!
 新田先生は、それをじぶんの、からだにつけた。すると、先生は、すっかり
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