つそこへ来たのか黒マントの丸木の前に、しきりに、憐みを乞うている様子だった。
丸木は、首を横に向けた。すると、前にかしこまっていたその火星人は、外へ出てしまった。丸木に叱られでもしたのであろうと、先生は思ったことである。
黒マントの丸木は、先生の方へ寄って来た。何か用事でもありそうな様子である。
新田先生は、立上って、身がまえた。
怪人丸木は、ずんずん前に寄って来る。彼の手には、妙な形の灯火《ともしび》がにぎられている。まるで竹筒のようでもあり、爆弾のようにも見える。
先生は、じりじりと下った。
穴ぐらの監禁室の中!
新田先生は、もうさがれるところまで、後さがりした。
それでも、黒マントの怪人丸木は、まだじりじりと先生に迫って来る。もうこれ以上、後にさがれない。先生はさっき丸木の言うことに、どうしても従わないと言ったので、丸木は大へんきげんを悪くしているはずだ。こうして、今また丸木が先生の前に迫って来たからには、いよいよ丸木は、先生の体に危害を加えるつもりではないか。
そう思うと、じりじりと穴の奥まで、追いつめられた先生は、もうどうにも助かる道がないように思った。先生は最後の勇気を出して、自分の鼻の先に迫って来た丸木の顔を、ぐっとにらみつけた。
「おや!」
この時先生は、非常におどろいた。急にくらくらと目まいを感じたほど、おどろいたのであった。
それは一体なぜだったろう。
丸木の眼は、いつも黒く色のついた眼鏡をかけていることは、誰でも知っている。今丸木はマントの下から手を出して、その眼鏡をとったのである。すると、その下から二つの眼が現れて、くるくると動いた。――生きている目だ!
火星人もそうであるように、怪人丸木もよく自分の首を下に落した。
ぽっくり下に落ちる火星人の首には、目玉がついているけれど、先に先生が発見したように、その目玉はガラス玉同様で、決して生きている人間の目玉のように動きはしないのである。ところが今、丸木の目玉が、くるくるぎょろぎょろと動いたので、先生は、びっくりしてしまったのだ。なぜ急に丸木の目玉が、生きている人間の目玉のように、動き出したのであろうか? 丸木だけが火星人として、特別仕掛のにせ首を持っているのだろうか?
先生は、丸木の動く目玉に、気を失いそうなくらいおどろいた。全く丸木という奴は、なみなみならぬ怪物だ。
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